「やっぱ製造やめません!」で話題の“日の丸飛行艇”今後どう動く? 海外に売る気ある? 気づけば“ライバル”続々

AI要約

海上自衛隊が運用する救難飛行艇「US-2」の生産が続けられる見通しと、世界的な飛行艇開発競争についての記事。

世界的に珍しい飛行艇の現状や過去、将来展望を述べつつ、US-2の輸出可能性やポストUS-2の開発について考察。

US-2の特徴や課題、海外の飛行艇開発との関連を踏まえながら、日本の飛行艇産業の今後について考える。

「やっぱ製造やめません!」で話題の“日の丸飛行艇”今後どう動く? 海外に売る気ある? 気づけば“ライバル”続々

 新明和工業が製造し海上自衛隊で運用している救難飛行艇「US-2」の生産が一転して継続される見通しになったことが、防衛省の令和7年度概算要求で明らかとなりました。US-2をはじめとする飛行艇は世界的にも希少な航空機のカテゴリですが、新興の国や企業のあいだで、新型飛行艇の開発競争も起きています。そうしたなか、世界市場へUS-2が食い込んでいくことはあるのでしょうか。

 US-2は、世界的にも数少ない現在実用化されている飛行艇のひとつです。飛行艇はもともと、エンジンの出力がまだ低かった時代に水上という長大な“滑走路”を利用できることから広まり、1930年代を中心として、海外路線に多くが使われました。

 その後は航空機の性能が上がり、各国の空港も整備されたことから、輸送機としては”用済み“の状態に。今や飛行艇を製造する国は、日本のほかカナダとロシアに限られ、その用途も海上救難や森林火災消火用などと限られています。

 しかし、最近では中国が水陸両用機AG600を飛ばし、2023年のパリ航空ショー(フランス)ではベルギーが計画する模型が展示され、2024年7月のファンボロー航空ショー(イギリス)でも、スイスのスタートアップ企業JEKTAやインドの水上機メーカーMEHAIRによる構想が紹介されています。

 その設計も斬新で、たとえばJEKTAの機体は水素を燃料とした電動で、イメージ図には10基のプロペラが描かれています。こうした開発が絶えないのは、飛行艇が離島間の輸送に用途があるとされてもいるからです。

 それでは、日本は飛行艇の将来をどのよう見ているでしょう。

 かつてあったUS-2の輸出話も下火になりはしましたが、7月のファンボロー航空ショーでは日本企業が集まって設けていた展示ブースに、US-2の模型も飾られていました。そこでブースにて聞いてみました。

 まず、スイスやインドネシアで構想されている機体については、ユニークな構想でもあり関心を持って見ているとのことでした。US-2自体は海自のみが使っているので世界的な知名度は低く、また飛行艇の使用法も海外の軍民それぞれで異なり、関心に温度差もあるため、US-2の輸出は容易ではないとのことでした。

 ただし、輸出への取り組み自体が決して断念されたわけではなく、展示ブースでは、「人員輸送としてのクオリティーをUS-2は持っている」との声も合わせて、今後も輸出への展開を進めていきたいとの声が聞かれました。

 US-2は救難ヘリコプターより長い航続距離と高速性をもちます。たとえば海上遭難者の救出や救急患者の輸送などで、重要な役割を今後も果たしていくはずです。反面、生産数も少なく製造費は高止まりになるという課題も残っています。

 こうしたなか、海外で飛行艇の開発が絶えないことを合わせると、US-2輸出の芽は完全に詰まれたわけではないのかもしれません。

 US-2は8月に初号機が除籍になり、概算要求が出る前は、生産の打ち切りや、無人機をはじめとする新型飛行艇の開発に移ると見られていました。今回の概算要求で生産継続となったものの、ポストUS-2の開発を始める時期も、そう先ではない未来に訪れるでしょう。日本発の飛行艇の将来を、海外の動向と輸出の機会もにらみながら今一度考えていかなければならないのかもしれません。