宇都宮ライトレール「乗客400万人」達成も課題山積! 利用者増を今後キープするためには何が必要なのか?

AI要約

栃木県宇都宮市と芳賀町を結ぶLRT宇都宮ライトレールが開業し、快挙を達成。利用者数も堅調であり、他自治体にも影響を与えている。

LRTを持続可能なものにするためには、地域イベントやコラボレーションを通じて利用者親しみを持たせる取り組みが重要である。

このアイデアは音楽やアートを中心にさまざまな形で展開でき、地域と路面電車の関係を深め、街の活性化に繋げることができる。

宇都宮ライトレール「乗客400万人」達成も課題山積! 利用者増を今後キープするためには何が必要なのか?

 栃木県宇都宮市と芳賀(はが)町を結ぶ次世代型路面電車(LRT)・宇都宮ライトレール(ライトライン)が2023年8月26日に開業して間もなく1年がたとうとしている。7月2日には、累計乗客数が400万人に達したことも発表された。開業から312日目での快挙である。

 6月期も、

・平日:1万5000~1万8000人

・土日祝日:約1万人

の利用があった。筆者(北條慶太、交通経済ライター)は6月後半の平日に乗車したが、昼間でも3両編成の車内には多くの立ち客がいた。ライトラインは沿線に

・大型ショッピング施設

・大学

・工業団地

がある。従来の路線バスや企業の送迎バスによる幹線輸送から、フィーダー輸送にバスを使う方向にシフトしている。

 調べてみたところ、宇都宮市の交通システムの変化を視察に訪れる地方議員や自治体関係者も増えているという。また、和歌山市や那覇市などLRT導入を検討する自治体も増えている。とはいえ、宇都宮市のようなケースでも、堅調な利用者の伸びを

「安定化」

させることは重要なテーマである。ライトラインも6月に貸し切り運行を開始している。他の地域でも、まちづくりの観点から路面電車の有効性を見直す動きがある。

 本稿では、快適で省エネなLRTと従来の路面電車(トラム、ストリートカー)を持続可能なものにする方法を検討してみたい。

 路面電車を持続可能なものにするためには、まず利用者に親しみを持ってもらわなければならない。路面電車のチャーター運行は、まさにその可能性を秘めている。なかでも注目されるのは、地域で

・イベントを開催する場所を探している人

・交流したり、何かを教えたりする場所を探している人

が、意外に多いことである。こうした人たちに路面電車を活用してもらい、街そのものを盛り上げていくことが重要だ。

 実例は多い。外国の話だが、イタリアのローマではこれまで「トラムジャズ」というイベントが開催されてきた。日常業務で使われなくなった古いトラムを

「移動式レストラン」

に改造し、ジャズの生演奏を聴きながら夜のローマ市内観光が楽しめるというものだ。食事やワインも用意され、ロマンチックな時間を過ごすことができる。ローマ市民の多くにも利用されており、観光客だけでなく、市内に住む人たちにも喜ばれている。まさにトラムがローマの街の魅力を高めているのだ。

 日本では、広島電鉄の路面電車でジャズのライブが行われた例や、都電荒川線で、パリの下町のノスタルジックな音楽を聴きながら沿線を楽しむイベントが行われた例もある。演奏者は魅力的な都電を楽しみ、聴き手はいつもと一味違った都電を楽しめるというわけだ。演奏者と聴き手のコラボレーションが実現し、双方が満足すれば、路面電車は街を盛り上げる魅力的な場所という認識が地域全体に広がるだろう。

 この発想は音楽だけでなく、絵画や書道などアート全般にも広げられる。地元の料理を作って味わう場にするのもいい。また、

・走る英会話教室

・走る寺子屋

・走るスマホ教室

などでもいい。大切なのは、路面電車のなかで、サービスを提供する側とサービスを受ける側の双方が楽しめる環境を作り、街を盛り上げることだ。そんな環境ができれば、路面電車は地域に愛される空間になるはずだ。