「年金の繰下げ受給」で2,000万円一括でもらえるはずが…念願の〈サ高住〉入居を目前に控えた74歳愛妻家、年金事務所で知らされた〈まさかの事実〉に愕然。突如「資金不足」に陥ったワケ【FPの助言】

AI要約

富永さん(仮名)が介護施設に入居するため、繰り下げていた年金を一括で受け取ることを決意。

年金受給額を増やすために繰り下げ受給制度を利用していたが、突然の事態によりその選択を見直すことに。

年金受給のリスクとメリットを理解することが重要。

「年金の繰下げ受給」で2,000万円一括でもらえるはずが…念願の〈サ高住〉入居を目前に控えた74歳愛妻家、年金事務所で知らされた〈まさかの事実〉に愕然。突如「資金不足」に陥ったワケ【FPの助言】

定年後も働く場合、最長で75歳まで年金を受け取らず、将来もらう年金額を増やすことができる「繰り下げ受給」という制度があります。年金額が増えるのは喜ばしいことですが、知っておかないと「損をする」システムもあるようで……。今回、夫婦で介護施設に入居するため、これまで繰り下げてきた年金を一括で受け取ることを決意した富永さん(仮名)の事例をもとに、ファイナンシャルプランナーである辻本剛士氏が、年金制度の盲点を解説します。

富永敦司さん(仮名・74歳)は、妻の洋子さん(仮名・74歳)と二人暮らし。一人息子は妻子を持ち、富永さんの自宅から車で30分程度の場所で暮らしています。

敦司さんは長年、中小企業の経理課で働いており、決算時期には帰宅時間が深夜になることも多く、多忙なサラリーマン生活を送っていました。一方の洋子さんは、そんな敦司さんを専業主婦としてサポート。敦司さんの帰宅時間が遅くなっても、文句ひとつ言わず、いつも機嫌よく家事や育児をこなす洋子さんを、敦司さんは「自慢の妻」と誇りに思っていました。

夫婦の資産状況は、預貯金と有価証券を合わせて700万円ほど。敦司さんは、定年後も嘱託職員として75歳まで雇用してもらえることになっており、嘱託後の年収は200万円です。加えて、洋子さんの老齢基礎年金が年間80万円支給されるため、現役時代よりも収入は下がるものの、引退後も夫婦2人で生活するには問題のない金額です。

そのため、敦司さんは65歳から受給できる年金を繰り下げており、75歳になったら、増額した年金を受け取りたいと考えています。

敦司さんが60歳で嘱託職員となってからは、夫婦で半年に1回は国内旅行に出かけることを楽しみにしており、引退後も、増えた年金分でそんな生活を続けられたら、と夢見ていました。

「繰下げ受給」を選択することで毎月の年金受給額が増額する

「繰下げ受給」 とは、年金受給の開始時期を遅らせ、将来受け取れる年金を増額させる制度です。

通常、65歳から年金の受給が開始されますが、この開始時期を遅らせることで、1ヵ月ごとに0.7%年金が増額していきます。年金の受給開始を5年間繰り下げた場合は、0.7%×60ヵ月で42%の増額です。

仮に、毎月の年金額として15万円受給する予定の人が、5年間繰り下げをした場合は次のようになります。

15万円×1.42=21万3,000円

このように、繰下げ受給をすることで、将来の年金受給額を増額でき、安定した暮らしを送りやすくなります。その一方で、繰り下げ後に受給を開始してすぐに亡くなってしまうと、年金をほとんど受け取れずに「繰り下げ損」となってしまうリスクもあります。