「なぜヒラ社員だったあいつと私の年金が同額なんだ」年金の仕組みを知らなかった平均年収900万円元部長の嘆き

AI要約

年収が低い人の方が将来の年金額が多いこともありうる。年金の仕組みを理解して退職後の生活設計をしておいたほうがいい。

公的年金制度には年収の差が反映されず、加入期間が受給額に影響する。収入の多寡に関わらず、年金の準備が重要。

国民年金と厚生年金の仕組みや違いを理解し、将来の年金受給額をチェックしておくことが必要。

現役時代の年収が高ければ、その分、将来に受け取れる年金額も多くなるだろうと考えている人は多い。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「年収が低い人のほうが将来の年金額が多いこともありうる。違いは上乗せ部分。年金の仕組みを理解して退職後の生活設計をしておいたほうがいい」という――。

■平社員と部長で受け取れる年金額が同じ?

 先日退職した方が家計のご相談に来られました。

 その際、話題になったのが、同期の方の年金額でした。自分は部長まで昇進したのにも関わらず、平社員だったと人と年金額がほとんど変わらない、というのです。そんなことはあり得るのでしょうか?

 結論から言いますと、ありえます。

 詳しくは後述しますが、公的年金(国民年金・厚生年金)の受給額は、年収の差ほど大きくならないしくみになっています。納める保険料には上限があり、一定の年収に達するとそれ以上年金額は増えないからです。

 よって、働いた期間や私的年金(企業型DC、iDeCoなど)の加入状況によっては、年収が少ない人の方が年金額は多くなることもありえます。

 収入が多い人は、その分生活費も多い傾向にあります。退職後は、年金だけでその生活レベルを維持することができず、毎月の収支が赤字になってしまうケースも少なくありません。

 収入の多寡にかかわらず、将来受け取れる年金の見込み額をチェックしておき、事前に生活費について考えたり、準備したりしておく必要があります。

■「国民年金」と「厚生年金」の違いをあらためて確認

 では、なぜ部長と役職のない方の年金額が同じであったのか。その理由を探ってみましょう。

 日本の年金制度は以下のようになっています。

 会社に勤めている人は、「国民年金」と「厚生年金」の2つに加入しています。企業によっては、「企業型DC」や「確定給付型企業年金」を上乗せしているところもあります。

 建物にたとえて、2つの制度に加入していることを「2階建て」、3つ加入していれば「3階建て」と呼ぶことがあります。

 1階部分の「国民年金」は、働き方を問わず、20歳から59歳までの全員が加入しています。自営業やフリーランスなど(第1号被保険者)が支払う国民年金の保険料は、全員同じで定額です。収入によっての違いはありません。国民年金の受給額は、加入期間で決まります。

 40年間(480カ月)納めた人の年金額は、年額81万6000円(2024年度)です。保険料を納めていない期間があると、受け取れる年金額も少なくなっていき、20年間(240カ月)を納めた場合は年額40万8000円、10年間(120カ月)納めた場合は年額20万4000円です(*1)。

 2階部分の「厚生年金」の保険料は、給与や賞与(ボーナス)によって、受給額や保険料が変わります。70歳まで加入できます。厚生年金保険料は、標準報酬月額の18.3%。国民年金保険料を個別に支払うことはありません。

 「国民年金」と違って、それぞれの働き方・働く期間によって納める保険料は異なり、将来受け取る年金額も変わるのが「厚生年金」の特徴です。また、厚生年金の保険料は勤め先と折半となっています。

 *1 国民年金の加入可能期間は40年(480カ月)です。国民年金を受給するには、最低10年(120カ月)の加入期間が必要です。