築40越のマンションで《想定外のトラブル》勃発…じつは「建替え」ができない物件が続出しているワケ

AI要約

マンションの寿命について不安を感じる人が多いが、管理状態によって寿命を延ばすことが可能

建替えができるマンションは少なく、高齢の区分所有者が多いため合意形成が難しいケースが多い

建替えが難しい場合、修繕費を値上げし、マンションの長寿命化に取り組むことが求められる

築40越のマンションで《想定外のトラブル》勃発…じつは「建替え」ができない物件が続出しているワケ

マンション購入を検討している方の中には「マンションはどれくらい長持ちするのだろうか?」「築何年まで住めるのだろうか?」など、マンションの寿命について不安を感じる人も多いのではないでしょうか?

国税庁はマンションの「法定耐用年数」を47年と定めていますがですが、これは会計上で建物の資産価値がゼロになるまで(減価償却)の年数のことを指し、マンションの寿命とは全く異なります。

そのため、新築から47年以上経過したマンションは実際に多くあり管理状態によって寿命を大きく伸ばすことも可能です。

国土交通省によると、日本のマンション総戸数(ストック数)は、2022年末時点で約694.3万戸。このうち125.7万戸は築40年以上です。20年後には築40年以上のマンションが445万戸と激増する見込みです。

このことを踏まえて、高経年マンションの再生には一般的に3つの方法があります。それが(1)長寿命化(耐震補強等)、(2)建替え、(3)敷地売却です。これらはマンションの立地条件や管理の状況、区分所有者の意向等により選択肢が変わってきます。

その中でも今回は、建替えについてマンション管理士の視点からお伝えします。

国交省が2023年に発表したデータによると、現在、旧耐震基準で建設されたマンションが約13万戸、うち、建替えされたマンションは、わずか282件の約23,000戸と極めて少ない数字です。

建替えができたマンションの多くは、敷地が広く、さらに容積率にも余裕があり現在よりも大きな建物を建築できるからであって、そういったマンション以外は経済的問題から住民全員の合意形成が難しいというのがほとんどです。

容積率などぎりぎりで建てられたマンションは、1住戸あたり2000万円~3000万円の資金が必要といわれています。それに加えて、引っ越し費用、仮住まい費用も必要になります。

建替えの時期を迎えているマンションでは区分所有者が高齢の方が多く、その資金の手当てが難しく合意形成がはかれないケースがほとんどです。

築年数が古いマンションは、建築当初には適法だったものの、現行の建築基準に合致しなくなった建物、いわゆる「既存不適格」のため現在の建築基準法によると同じ規模で再建築ができないこともあります。

江東区の築50年、300世帯規模の大型マンションでは、東西線沿線駅徒歩4分と恵まれた立地にありながら、建替えができないというトラブルに見舞われました。

もともと大きな土地が充分にあると考えて、管理組合員の多くは将来の建替えを視野に入れ、為修繕費を抑えるべく配管部分の工事を破損個所のみを更新し、全体的な修繕は控えていました。

いよいよ老朽化を迎え、マンション管理士の提案もあって管理組合は建替えた場合の規模をデベロッパーに依頼。その検討の結果として、今の法制度では1,000平方メートル以上も延床面積が小さいマンションしか建てられない事が判明しました。

これでは、建替えの為の工事費の支出やお住まいの方の再生マンションへの住み替えも難しい状況です。この現実を知り管理組合は方針を変えて、これまで抑制してきた修繕積立金を値上げし、不具合個所をまとめて修繕するなど、マンションの長寿命化に舵きりをしたそうです。