消える歩道橋 平成以降、県内17カ所

AI要約

富山県内で歩道橋の撤去が相次いでおり、富山市安野屋町や南砺市でも解体作業が進行している。

昭和40年代に設置された歩道橋は老朽化や小学校統廃合により利用者が減少し、今後の新設予定はない状況。

交通事故防止を目的とした歩道橋は全国的に建設されたが、現在は時代の変化により撤去が進んでいる。

消える歩道橋 平成以降、県内17カ所

  ●富山・安野屋で撤去、南砺は8月解体

  ●老朽化や小学校統廃合

 昭和40年代に富山県内で設置された歩道橋が相次ぎ撤去されている。1989(平成元)年以降で17カ所が撤去され、富山市安野屋町では今月中旬から撤去工事が始まった。南砺市二日町にある市内唯一の歩道橋は8月中旬に解体される。交通事故防止のため通学路に建設されたが老朽化し、少子化による小学校の統廃合で利用者は減少しており、今後新設される予定はない。

 国土交通省富山河川国道事務所、県、市町村によると、平成に入ってから撤去された歩道橋は市町村別で、富山11、高岡3、射水3となっている。残っているのは撤去作業中の安野屋町を含め28カ所で、市町村別では富山18、高岡5、射水2、魚津、滑川、南砺各1となる。

 安野屋町歩道橋は長さ24・5メートル、幅約1・9メートル、橋桁下の高さ約5メートルで、1968(昭和43)年に設置された。主に安野屋小児童が登下校時に利用していたが、2006年に芝園小との統合で閉校となり、利用者が減っていた。

 管理する富山市では需要が少ないとみて廃止を決め、今月中旬から階段の解体作業を始めた。8月3、4日の夜間に市道を通行止めにして橋桁を取り除く。

 約60年前から近くに住む藤井みきこさん(83)は「歩道橋の上から松川べりの桜並木を眺めるのを毎年楽しみにしていた」と寂しそうに話した。

 歩道橋を撤去する動きは各地でみられる。南砺市は1974(昭和49)年に設置した福野小前の歩道橋の解体工事を8月19~23日に行う。富山市は道路のアンダーパス平面化工事に合わせて牛島新町の歩道橋も撤去する。

 歩道橋は昭和40年代に車の急速な普及で「交通戦争」と呼ばれるほど事故死者が激増した時代を背景に、子どもを守るため全国一斉に建設された。車の通行を妨げず、渋滞の緩和と歩行者の安全確保を両立できるとして重宝された。県内でも交通量の多い富山、高岡を中心に設置された。

 富山市道路構造保全対策課の杉木光晴課長は少子高齢化に伴い、子どもの利用は減っているとし、「お年寄りからは階段の上り下りに苦労するとの声を聞く。撤去は時代の流れとはいえ、惜しむ声も聞こえてくる」と話した。