イオン“創業者の孫”が執行役に就任で「大政奉還」の流れ ドラッグストア再編にどう対応するのか、注目集まる

AI要約

イオンの創業家から尚也氏が執行役に昇格し、ドラッグストア業界への進出が注目されている。

尚也氏は若手ながら経歴を重ね、将来的な社長昇格の可能性もある。

イオンは常に時代の変化に合わせた経営を行い、創業家の力を活用している。

イオン“創業者の孫”が執行役に就任で「大政奉還」の流れ ドラッグストア再編にどう対応するのか、注目集まる

 セブン&アイと並び大手流通業の“2強”と称されるイオンでは3月1日、創業者・岡田卓也氏(98)の孫で現会長・元也氏(73)の長男である尚也氏(40)が執行役に就任した。『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。

「尚也氏は外資系証券会社勤務後、2015年にイオンリテールに入社。『まいばすけっと』店長などを経て、2019年にオーガニック専門スーパー『ビオセボン・ジャポン』社長に就任した」

 今回の人事は元也会長を筆頭に15人からなる執行役への就任で、マレーシア社長にも昇格した。

「元也会長は1989年に衣料品店『タルボットジャパン』の社長に就任し、翌年にジャスコ(イオンの前身)の取締役に就任しました。そうした流れと符合します。元也会長はかつて『世襲は自分で終わり』と明言したこともありましたが、額面通りに受け取った人は業界内では少なかった」(同前)

 元也氏が副社長の吉田昭夫氏(64)に社長の座を譲ったのは2020年3月。同社のトップ交代は実に23年ぶりだった。

「その際、イオン関係者からは『吉田社長が中継ぎとして体制を整え、岡田家に大政奉還する流れになる』との声が多く聞かれました」(同前)

 とはいえ、経済ジャーナリストの磯山友幸氏によると、40歳と若い尚也氏は「業界内ではまだ評価が固まっていない」という。同社に尚也氏の執行役就任は社長就任に向けた人事なのか尋ねると「将来のことについてはお答えできません」とした。

 イオンはスーパー事業の好調などで業績を伸ばしているが、注目されるのが、ヘルスケア分野への進出だ。イオンは子会社にドラッグストア業界1位のウエルシアHDを持ち、同2位のツルハHDとの経営統合を目指し、協議を進めている。実現すればドラッグストア業界は「イオン一強」となる。磯山氏が言う。

「人口減少で既存の郊外型商業施設の先行きが見通せないなか、医療分野は規制緩和で次々と新しいサービスが生まれている。ドラッグストアはその拠点として成長する可能性があります。今後、ドラッグストアがイオンの中核事業になるか、注目が集まっている」

 岡田家には「大黒柱に車輪をつけよ」との家訓がある。大黒柱の事業も不動のものではなく、常にその時の最適解を求める経営姿勢を指す。

「尚也氏が将来的に社長に昇格するとすれば、ドラッグストア業界再編という大きな変化にどう対応するかが問われるでしょう」(同前)

 先行きが見通せない時代だからこそ、辣腕を振るえる創業家の力を求めているのかもしれない。

※週刊ポスト2024年7月19・26日号