セブン&アイHDで鮮明になる「創業家回帰」、イトーヨーカ堂設立者の次男・伊東順朗氏が次期社長候補に 「スーパー事業」からの撤退を決断できるどうかにも注目

AI要約

セブン&アイHDでは、創業家回帰の動きが見られる。創業者の鈴木敏文氏が退任し、創業家の雅俊氏の息子である順朗氏が重要なポストに就いている。

鈴木氏の突然の引退は、社内の混乱を招き、会社の方向性について混乱が生じた。その後、井阪隆一氏が創業家回帰を進め、順朗氏がセブン&アイHDの代表権を持つまで昇進した。

伊藤家回帰が進んでおり、企業経営に創業家の一族が復帰する流れが加速している。

セブン&アイHDで鮮明になる「創業家回帰」、イトーヨーカ堂設立者の次男・伊東順朗氏が次期社長候補に 「スーパー事業」からの撤退を決断できるどうかにも注目

「創業家」による同族経営は外資ファンドによる買収リスクにつながるとの指摘もあるが、近年、グローバル展開する大企業で「創業家回帰」の動きも見られる。セブン&アイHDでも「創業家への大政奉還が近い」との見方がある。

 1920年に東京・浅草で開店した「羊華堂洋品店」をルーツとし、戦後、伊藤雅俊氏がイトーヨーカ堂を設立。総合スーパーとして事業を拡大させた。同社でセブン-イレブン・ジャパンを立ち上げた鈴木敏文氏(91)が1992年に社長となると、イトーヨーカ堂グループはコンビニ事業を軸に成長。2005年には持株会社セブン&アイHDが設立され、鈴木氏が経営トップに就任。創業者の雅俊氏は名誉会長に退いた。

 しかし2016年、鈴木氏は突然引退を発表する。全国紙経済部記者が言う。

「2015年に鈴木氏が次男の康弘氏(59)をHDの取締役に据える人事を行なうと、“世襲を狙っている”との見方が浮上。さらに鈴木氏は2016年に当時セブン-イレブン・ジャパン社長だった井阪隆一氏(66)の退任を提案したが、大株主である雅俊氏に反対された。そうして社内の混乱を招いたことで、同年5月に鈴木氏は康弘氏とともに退任。その後、HD社長に就任した井阪氏は創業家回帰を進めるとみられている」

 イトーヨーカ堂を立ち上げた雅俊氏は2023年に亡くなったが、注目の人物はその次男・順朗氏だ。

 1990年にセブン-イレブン・ジャパンに入社した順朗氏は鈴木体制下では目立たない役員ポストに置かれていたが、鈴木氏の退任を機に2016年末にセブン&アイHD常務に昇格、経営推進室長として井阪社長の右腕となった。

 そして今年5月には代表権を持つ副社長に就任した。『経済界』編集局長の関槙夫氏が言う。

「順朗氏と入れ替わりでHD副社長を退任した後藤克弘氏は鈴木氏が非常に評価していた人物で、現経営陣と鈴木氏がコミュニケーションを取る際の仲立ち役を担ってきたと言われています。後藤氏の退任で代表権を持つのは井阪社長と順朗氏だけとなり、伊藤家回帰が鮮明になりました」