好調、DUCATI Team KAGAYAMA。加賀山監督「違う文化で作り上げたバイク」で表彰台も視野に鈴鹿8耐へ初挑戦

AI要約

2024年シーズンにおける全日本ロードレース選手権でのホットワード、『黒船来航』。DUCATI Team KAGAYAMAは、新たな挑戦としてFIM世界耐久選手権デビューを果たす準備を進めている。

Team KAGAYAMAは強力なライダーラインアップを敷き、事前テストでは好成績を収めているが、耐久性については未知数である。

加賀山監督やライダーたちは、ファクトリーマシンの良さを実感しつつも、新たな挑戦に高い意欲を燃やしている。

好調、DUCATI Team KAGAYAMA。加賀山監督「違う文化で作り上げたバイク」で表彰台も視野に鈴鹿8耐へ初挑戦

 2024年シーズンにおける全日本ロードレース選手権でのホットワード、『黒船来航』。2023年にスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)でアルバロ・バウティスタがチャンピオンを獲得したドゥカティのファクトリーマシンが、加賀山就臣率いるTeam KAGAYAMAによって日本に持ち込まれた。そんな彼らは2024年の鈴鹿8時間耐久ロードレースにて、新たな挑戦としてFIM世界耐久選手権(EWC)デビューを果たす。2回の事前テストをトップタイムで終えた同チームの監督やライダーは、マシンやチームの仕上がりにどのような印象を抱いているのだろうか。

 大注目を集めているDUCATI Team KAGAYAMAは、今季から全日本ロードの最高峰JSB1000クラスに水野涼がフル参戦している。開幕から3戦5レース全て表彰台を獲得しており、3戦終了時点ではランキング3位につけている。そんなDUCATI Team KAGAYAMAは、水野を筆頭に強力な2名のライダーを迎え入れて鈴鹿8耐に臨むことになる。

 まずは、オーストラリアンチャンピオンシップ(ASBK)にてドゥカティ車に乗り、現在ポイントランキング首位となっているジョシュ・ウォータース。そして、FIMアジアロードレース選手権のASB1000クラスでドゥカティを駆るハフィス・シャーリンという布陣でレースに挑む。外国人ライダー2名とも、スズキ時代のTeam KAGAYAMAなどで鈴鹿8耐参戦経験を持つベテランライダーだ。

 そんな強力なライダーラインアップを敷くTeam KAGAYAMAは、6月4~5日に行われた事前テスト1回目ではほぼスプリント仕様のバイクでテストを開始。耐久用パーツの多くは6月19~20日に開催された事前テスト2回目で初めて投入されたという。過去のデータが一切ない状態で行われたテストであったが、水野を中心にライダー3名全員が好タイムを刻み、2分05秒162の全体トップでテストを終了した。

 2度目のテストの内容について、加賀山就臣監督はこう語る。

「今回のテストで、やっとファクトリー車にTeam KAGAYAMAでタンク、クイックチェンジ、タイヤを早く交換するためのパーツ、スタンド、ヘッドライトシステムなどのエンデュランス用のパーツを全てつけ始めました」

 本国のドゥカティファクトリーはEWCには未参入のため、当然ドゥカティの耐久用パーツというものは存在しない。今回の鈴鹿8耐参戦にあたっては、タンク以外の多くの部品をTeam KAGAYAMAのスタッフが自作したようだ。

「うちのメカニックは本当にすごいと思う。タンクやヘッドライト、レーシングスタンドなどを、ささっとKAGAYAMA製で作ってしまうからね。このバイクはだんだんファクトリー車から、部分的にはKAGAYAMA車になってきましたね(笑)」

 2回目のテストでは、DUCATI Team KAGAYAMAのみが初日からロングラン走行を多く行っていた。その理由を加賀山監督はこう話す。

「テストでは耐久用パーツのライフ確認を中心に行いました。その辺が唯一我々の不安点というか……。今、問題点を洗い出して、それを潰すという作業をやっています。他のチームは鈴鹿や耐久に関するいろいろなデータを持っているけれど、我々はそういうデータが一切ないから、テストの順番は変わってきます」

「燃費も各パーツのライフも、パーツが機能するかしないかも、前歴がないのでテストで全て確認しなければなりません。そういった問題点はロングランの中に隠れるので、鈴鹿8耐を完走するために、ロングランは絶対にやらなくてはいけないことでした」

 さらに、ライダーのジョシュ・ウォータースは2回のテストを終えた感触をこう語る。

「涼が飛び抜けて速くて、自分とハフィスは徐々にフィーリングをつかんでいる感じ。涼はレースペースでも2分05秒台で回っていたし、自分とハフィスもレース用のタイヤで2分06秒台で回れている。テストは順調でとても良かったよ」

 昨シーズンよりオーストラリアンチャンピオンシップの最高峰クラスでドゥカティ パニガーレV4 Rを駆っているウォータースだが、普段使うマシンはキット車だ。

「ファクトリーマシンは自分がオーストラリアで使うマシンと全然違う。とにかく速いしスムーズだけど、アタックしようとするとバイクの挙動を抑えるのに少しコツがいるので、今は各コーナーでの乗り方を勉強している。まだラップタイムがうまくまとまっていないんだ」

 ドゥカティファクトリーとしては初の耐久選手権参戦となるが、マシンの耐久性に不安はあるのだろうか。

「ドゥカティのマシンは耐久向きではないと言われているけれど、それは違うということを証明できれば嬉しい。自分としては感触はとても良いし、どうなるのか自分でも楽しみ。耐久は運も必要だから、全員が悪運に見舞われないように祈るばかり。でも、良いところまで来ていると感じているし、テストでも素晴らしいパフォーマンスを見せられたから、表彰台を目指して頑張るよ」

 テスト2回目の初日には残ガステストのために加賀山監督自らマシンを走らせるサプライズも。初めてファクトリー仕様のパニガーレに乗ったという加賀山監督は、次のように振り返った。

「オートバイのフィーリングは、全く違うね。やっぱり違う文化で作り上げたバイクだなってすごく思います。なので、ぱっと乗ってすぐ攻めようとは思いませんでした。だけど、世界で好成績残しているチャンピオンバイクっていうのは間違いないので、『あ、オートバイってこういう方向もあるんだな』っていうのを再確認しました。スロットルワークも車体のフィーリングも、感じ方が全然違う」

「パニガーレって外側から見ただけでもフレームの作り方もパーツのつき方も全く違うでしょ。それがもうそのまんま、違う乗り味になっています。日本車とは違うレイアウトでできているということは、違う乗り味があるということ。エンジン関連も全然考え方が違うなと思いましたね」

「なので、ちょっとドゥカティ乗りをリスペクトしてしまいますね。うちの水野もそうだし、バウティスタたちもそうだし。本当に『速く走るためのバイク』だけれど、新しい世界なのかもしれないね。ああいうオートバイの作り方も理解して今後トライしないといけないなって、そのときに実感しました」

 ドゥカティファクトリーの耐久選手権への挑戦は、7月19~21日に鈴鹿サーキットで開催される『2024 FIM世界耐久選手権”コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会』で、また新たな挑戦へ挑む。テストで好走を見せ、手応えも感じている彼らが、本戦でどのようにチャンピオンマシンの本気を披露してくれるのか……見逃せない。

[オートスポーツweb 2024年07月15日]