定額減税、一定の条件下で「二重取り」が発生 制度設計の不備や公平性の問題指摘する声も

AI要約

6月に始まった定額減税において、配偶者の扶養に入りながらパートなどで働く人が二重取りの減税効果を享受する事例が発生している。年収100万円超~103万円以下の場合、実質8万円の減税効果を得ることが可能だ。

政府はこの二重取りを容認し、後日還付させる仕組みや手続きは想定していない。財務相は公平性と事務負担を考慮し、一時的な措置であるため二重取りを容認する方針を示している。

税理士の菊池氏は、制度設計の分かりづらさや公平性の問題を指摘し、全額給付にすべきだったと主張している。

定額減税、一定の条件下で「二重取り」が発生 制度設計の不備や公平性の問題指摘する声も

6月に始まった定額減税を巡り、1人で2人分の減税効果を〝二重取り〟する事例が生じることが判明した。6月開始や減税方式にこだわったことが原因とみられる。識者からも、制度設計への疑問や公平性の観点から全額給付にすべきだったとの声が上がっている。

■実質8万円の減税効果も

二重取りが起こるのは、配偶者の扶養に入りながらパートなどで働く人のうち、100万円超~103万円以下の年収を稼ぐケースだ。この場合、所得税はかからないが住民税は徴収される。

定額減税制度では、年収が103万円以下であれば、配偶者の給与や賞与から所得税と住民税の計4万円が減免される。

これに対し、年収が100万円を超え、自分で住民税を支払うケースでは、自分の収入に対して定額減税が発生する。所得税は引き切れないため、差額が給付される。こうして計4万円分の減税・給付も併せて受けられるため、実質8万円の減税効果を享受できる。

■政府は二重取りを容認

総務省や国税庁は取材に対し、二重取りが発生しても、後日還付させる仕組みや手続きは想定していないとしている。

鈴木俊一財務相は12日の記者会見で、公平性確保は重要としつつ、「今回の定額減税は一時的な措置であり、企業や自治体の事務負担に配慮することも重要」と述べ、二重取りを容認する判断に至った事情を説明した。

辻・本郷ITコンサルティング取締役で税理士の菊池典明氏は公平性の問題を挙げた上で「年末調整ではなく、6月から減税を始める点などがこの制度を分かりづらくしている。全額給付にすればよかったのではないか」と指摘した。(永田岳彦)