周りの人の心身をボロボロにする「職場を腐らせる人」がもたらす悪影響

AI要約

職場を腐らせる人を変えるのは至難の業であるため、気づくことが重要。

職場を腐らせる人による主な反応は、重苦しい雰囲気、不和やもめごと、心身の不調の増加、沈滞ムード、疲弊。

職場を腐らせる人は自己正当化の達人であり、自己保身に走る傾向がある。

周りの人の心身をボロボロにする「職場を腐らせる人」がもたらす悪影響

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

職場を腐らせる人を変えるのは至難の業なので、「根気強く言い聞かせれば改心してくれるだろう」「謙譲の美徳をもってすれば反省してくれるだろう」などと期待してはいけない。そういう期待は、願望と現実を混同する幻想的願望充足にほかならない。だから、すぐに捨て去るべきだ。そのうえで、どうすれば実害を少なくできるかを考えるしかない。

職場を腐らせる人に対処するうえで何よりも大切なのは、まず気づくことである。上司や同僚に職場を腐らせる人がいることに気づけないと、その一連の言動によってあなた自身が心身に不調をきたすかもしれない。

よくお目にかかるのは、心身ともにボロボロになってから初めてストレスの原因は一体何だったのだろうかと考えるようになり、「あの人が側にいるときに限って、調子が悪かった。あの人が職場を腐らせ、私をむしばんでいたのだ」とやっと気づいたという患者さんだ。これでは手遅れになりかねない。だから、わが身を守りたければ、早めに気づくことが何よりも必要だ。

一刻も早く気づくために、職場を腐らせる人がいると、周囲に次のような反応を引き起こしやすいことを認識しておこう。

(1)重苦しい雰囲気

(2)不和やもめごと

(3)心身の不調の増加

(4)沈滞ムード

(5)疲弊

(1)重苦しい雰囲気

咳や鼻水が風邪の症状であるのと同様に、重苦しい雰囲気は、職場を腐らせる人がいることを示す重要なサインである。毒のある言葉や周囲を振り回す行動に職場全体が無意識のうちに反応しているのであり、張り詰めた空気が漂い、人間関係もぎくしゃくする。

このような雰囲気に耐えられなくて、もしかしたら自分のせいではないかと罪悪感を覚える方もいるかもしれない。これは、向こうの思う壺である。何でも他人のせいにし、他の誰かが思い悩む姿を見ると快感を覚えるサディズム的心性の持ち主が、職場を腐らせる人には少なくないのだから。

だからこそ、こういう人の手口や、その背景にある心理をきちんと理解しておくことが必要になる。何よりも、あなた自身が振り回されないように、そして、万一ターゲットにされても、ちゃんと抵抗できるように。

(2)不和やもめごと

不和の種をまく人が典型だが、職場を腐らせる人はしばしば周囲を仲たがいさせて、お互いに離反させようとする。嫉妬や怒りなどをかき立てるのがうまいので、周囲に不和やもめごとが絶えないのは当然の帰結であり、自分の思惑通りになれば、当の本人は己の影響力を実感してほくそ笑む。

しかも、きわめて巧妙に波風を立てるので、不和やもめごとを引き起こしている真犯人が一体誰なのか、周囲はなかなか気づけない。気づくまでに相当時間がかかることが多く、最後まで気づかないことさえある。

たとえ気づいたとしても、周囲がすでに反目し合っていれば、不和やもめごとの元凶に対し、団結して立ち向かう展開にはなりにくい。そのため、種をまいた当の本人は責められることも仕返しされることもなく、のほほんとしていられる。

(3)心身の不調の増加

職場を腐らせる人がいると、必ずといっていいほど心身に不調をきたす人が増える。不安やイライラなどの精神症状、吐き気や動悸などの身体症状に悩む人が出てくるわけで、なかには医師の診察を受けなければならないほど悪化する人も少なくない。その結果、休職、ときには退職も視野に入れて考えるようになる人もいる。

これは必ずしも偶然とはいえない。職場を腐らせる人の側で毎日毎日毒のある言葉を聞かされたり責任を押しつけられたりしていると、知らず知らずのうちに心身が壊れていくので、自然とそうなるのではないか。また、自分の心身の不調を自覚した時点で、これ以上悪化させないために休職や退職を検討するのも当然の防衛反応だろう。

(4)沈滞ムード

職場を腐らせる人が一人でもいると、できる人ほど、うんざりして辞めてしまう。だから、能力も意欲もない人が残ることになりやすい。その結果、活気がなくなり、沈滞ムードも漂うようになる。

すると、どうしても、ちょっとしたミスやしくじりが繰り返されやすい。当然、誰もが落ち込んで、やる気を失う。そうなれば、何をやっても失敗するので、責任の押しつけ合いになる。ただ、こういう状況を前にしても、アリストテレスが定義した悪意の持ち主、つまり相手が得をしないように他者の願いの邪魔をする人は、むしろほくそ笑む。

なぜかといえば、周囲に沈滞ムードが漂い、仕事がうまく進まない状況では、他者の欲望が満たされないので、それを見て快感を覚えるからだ。第一、職場に嫌気が差して退職する人が続出すれば、自分の椅子は守られるわけで、結局は自己保身につながる。少なくとも、本人はそう思っているはずだ。沈滞ムードが続けば、いずれは職場自体がなくなる恐れもあるだろうが、そういう先のことは考えないのが他者の願いの邪魔をしたい人の特徴である。

(5)疲弊

職場を腐らせる人が近くにいると、あなた自身が直接ターゲットにされていなくても、エネルギーが枯渇していくように感じるに違いない。当然、他の人も打ちひしがれ、気力がなくなったように感じ、結局みな疲弊していくことになる。

明確な理由がないのに、何となく疲れ果てたと感じたら、周囲を見回すといい。そういうときに限って、誰かが周囲にいないだろうか。もし、いたら、その人が元凶である可能性が高い。もしかしたら、優しい親切そうな顔であなたに近づき、「○○さんが~と言っていた」と耳元でささやくかもしれない。

このような反応が周囲で起きていれば、職場を腐らせる人がいるのではないかと疑うべきである。ここで忘れてはならないのは、こういう人は自己正当化の達人で、自分が悪いとは思わないことだ。もちろん、自分のやったことを振り返り反省するような殊勝な真似などしない。

自分が常に正しくて、いつも間違っているのは他人と思い込んでいることも少なくない。だから、性懲りもなく同じことを繰り返す反復強迫に陥りやすい。これは、職場を腐らせる人の多くに共通して認められる傾向なので、この手の人が周囲にいたら警戒すべきだろう。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。