世界的な環境問題を解決する「愛知県の火力発電所」のプロジェクト…二酸化炭素を出さない「アンモニアへの転換」と3つの課題

AI要約

記事では、筆者が酷暑の中、愛知県のJERA碧南火力発電所を取材した様子が詳細に述べられている。

発電所のアンモニアへの転換など、先進的な取り組みや課題にも触れられている。

取材の過程でアンモニアの安全教育など、具体的なエピソードも紹介されている。

世界的な環境問題を解決する「愛知県の火力発電所」のプロジェクト…二酸化炭素を出さない「アンモニアへの転換」と3つの課題

これも地球温暖化に伴う異常気象のひとつなのかと感じざるを得ない酷暑に見舞われた先週月曜日(7月8日)、筆者は、担当ラジオ番組の収録と配信用の動画撮影も兼ねたロケ取材で、発電最大手JERAが愛知県に保有する碧南火力発電所を訪ねた。碧南火力発電所は、公園や体験型ミュージアムを備えた地域共生施設「JERA park」も併設するユニークな発電所だ。

筆者は、何よりも、この発電所が、燃やす燃料をCO2(二酸化炭素)の排出が避けられない石炭から、CO2を排出しないアンモニアに段階的に転換するプロジェクトを進めている日本で唯一の大型石炭火力発電所である点に興味を持っていた。もちろん、このプロジェクトの目的は、世界的な課題のカーボンニュートラルを実現する一助とすることにある。

取材の折、発電所は4月に始めた20%分の燃料のアンモニアへの転換のための実証試験を6月に終えて、今は早ければ2027年度にも開始する予定の商用運転に向けて設備の新設や改修に取り組む段階に移っていた。

インタビューに応じてくれた碧南火力発電所の坂充貴・所長をはじめ、職員らの熱量は折からの酷暑にも負けないほど熱かった。単に新たな技術に挑戦するだけでなく、劇物に指定されているアンモニアをこれまでとは異なる規模感で扱うための安全対策や周辺住民、消防、病院との情報共有にも力を入れているというのである。

カーボンニュートラルと言っても、日本と同様に、世界には再生可能エネルギーや原子力発電といったCO2を排出しない発電だけでは必要な量の電気を賄い切れない国が少なくない。それだけに、JERAの商用化が成功すれば、そういった国々の福音にもなり得るし、日本の輸出拡大に寄与する可能性もある。

とはいえ、アンモニアへのエネルギー転換は、1カ所の発電所や電力会社1社の努力だけで実現するほど容易な事業ではない。今回は現地取材の報告に加えて、火力発電の燃料転換が抱えている喫緊の課題も考えてみたい。

前夜から名古屋入りした筆者は朝一番で、レンタカーを借りて、名古屋駅の新幹線口近くで、ラジオと動画のスタッフたちと合流した。取材目的の碧南火力発電所は名古屋市から南へ約40km。衣浦湾に面した場所にあり、1号機から5号機の合計で総出力が410万と国内最大を誇る火力発電所である。景観にも配慮した措置で、主要設備の建屋には、三河湾に浮かぶヨットをモチーフにした装飾を施しているのも特色のひとつだ。

だが、筆者の一行は、名古屋駅から出発して間もなく、高速道路で事故渋滞に巻き込まれてしまい、発電所のゲートへの到着が予定より30分以上も遅れてしまった。すでに日は高く上がり、容赦なく、我々に照り付けてきた。地球温暖化が呼び寄せたと考えざるを得ない“酷暑”の中での取材となったのである。

照り付ける日差しにもかかわらず、管理棟の入り口には、坂所長ら4人が出迎えてくれた。入り口脇の会議室に通され、お互いの挨拶もそこそこに始まったのは、なんとアンモニアに関する「安全教育」だった。アンモニアは常温では無色透明の気体だが、強い刺激臭があるので、万が一、漏えいしていれば気が付くはずだとか、匂いがしたときは決して近づかない、触らない、眼に入れないといった注意を受けたのである。