ヘッドライトにも「2024年問題」到来? ロービーム検査の徹底がもたらす影響をご存じか

AI要約

ヘッドライト検査基準が厳格化され、新基準のロービーム検査が2024年8月から徹底されることになった。

新基準では光軸や光量だけでなく、リフレクターの反射光度も計測されるため、20年以上経過した車両では劣化が問題視されている。

樹脂製のレンズやリフレクターの経年劣化が光軸や光量に悪影響を及ぼし、検査基準をクリアするための整備が必要となっている。

ヘッドライトにも「2024年問題」到来? ロービーム検査の徹底がもたらす影響をご存じか

 近年、ヘッドライトの検査基準の「厳格化」が注目を集めている。

 厳格化とはいえ、ヘッドライトの検査基準は2015年にすでに変更済み。2018年から新基準でロービームによる検査を行うことが決定していた。しかし、旧基準で生産された車両が多く、暫定措置として従来通りハイビーム計測でも基準を満たせば問題がなかった。

 そして2024年8月、暫定措置の期間を終え、ロービーム検査が徹底されることに。新基準検査の対象は1998(平成10)年9月1日以降に生産された車両。もちろん対象車両はロービーム検査基準に合わせて設計されている。

 ロービーム検査に移行した背景には、日本の交通事情の変化により

「ハイビームでの走行機会が減少した」

ことが挙げられる。実際の夜間走行で多用するロービームを検査することで、光軸や光量を適切な状態に保った車両が車検を通過するのだ。

 実情に合わせて検査基準を見直し、暫定期間も経て実施される新検査基準。準備万端で何も問題ないように思えるが、騒がれているのは一体なぜなのだろうか。

 大きな混乱が予想される背景にあるのは、まさしく検査基準の厳格化だ。

 前照灯の検査では

・光量

・光軸

・色味

が検査されるが、ハイビーム検査は照らす方向が適切であれば光軸検査にパスできた。光量も、最も明るい部分が1mと10mで同等の明るさなら合格できたのである。ややざっくりな印象だ。

 一方、新基準のロービーム検査では、前方10mで「エルボー点」と呼ばれるカットラインが規定位置になければ合格できない。光量も1灯につき6400cd以上の明るさが必要だ。電球の明るさではなく、

「リフレクターで反射した光度」

が計測される。光軸・光量ともにランプ自体の性能だけでなく、ヘッドライトユニット全体の影響を大きく受けるのだ。

 新基準検査の対象車両は新基準に対応する性能をもって生産されている。しかし、対象車両の中には20年以上経過した車両も存在するのだ。そのため、光を反射させるリフレクターやヘッドライトのレンズが大きく劣化している車両もある。

 実際、樹脂製のレンズは経年劣化によって黄ばんでしまう。黄ばんだレンズはバルブの光量を低下させる。リフレクターも同様に経年劣化が懸念されるパーツだ。リフレクターは光を効率よく反射できるようにメッキ加工が施されている。劣化により表面が荒れてボロボロになったり、メッキ部分が剥がれたりしてしまうのだ。光を反射できず光軸・光量ともに悪影響を受けることになる。