うらやましい「貯蓄3000万円以上」…60歳代か70歳代のどちらが多いのか
老後生活への不安や物価高の影響により、高齢者世帯の生活苦が増加している。
60歳代の貯蓄状況を中央値で考察すると、老後資金が心もとない状況が浮かび上がる。
貯蓄3000万円以上を保有する割合は60歳代よりも70歳代で高いが、金融資産非保有割合も高く、貯蓄格差が存在する。
「老後2000万円問題」や「近年続く物価高」などの影響により、老後生活に対する不安感が高まっている人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が2024年7月に公表した「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の59.0%が「生活が苦しい」と感じており、前年度よりもその比率は10ポイント以上も上昇しています。
このように、物価高が続く現代においては生活が困窮する高齢者世帯も増加傾向にありますが、中には貯蓄3000万円以上を保有する世帯も存在します。
本記事では、60歳代・70歳代における貯蓄事情について詳しく紹介していきます。
60歳代と70歳代のどちらが「貯蓄3000万円以上」の割合が高いのか、見ていきましょう。
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まずは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」から、60歳代の平均貯蓄額と貯蓄割合を確認していきましょう。
上記調査によると、60歳代の平均貯蓄額は下記のとおりです。
・単身世帯:平均値1468万円、中央値210万円
・二人以上世帯:平均値2026万円、中央値700万円
平均値を見ると、単身世帯・二人以上世帯ともに1000万円以上となっていることから、「老後に向けて多くの人がある程度の貯蓄ができている」と思われたかもしれません。
しかし平均値は、極端に大きい値の影響を受けやすいため、必ずしも実態を反映しているとは言えません。
より実態に近い貯蓄額を知りたい場合は、データの中央に位置する数値を示す「中央値」を参考にすると良いでしょう。
60歳代の中央値を見ると、単身世帯・二人以上世帯ともに1000万円に到達しておらず、特に単身世帯においては210万円と、老後資金としては心もとない金額といえます。
では、貯蓄3000万円以上を保有している60歳代はどのくらいいるのでしょうか。
世代ごとに、貯蓄割合を確認していきましょう。
●60歳代・単身世帯の貯蓄割合
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60歳代・単身世帯の貯蓄割合は下記のとおりです。
・金融資産非保有:33.3%
・100万円未満:8.5%
・100~200万円未満:4.7%
・200~300万円未満:2.8%
・300~400万円未満:4.3%
・400~500万円未満:2.4%
・500~700万円未満:3.5%
・700~1000万円未満:2.8%
・1000~1500万円未満:6.6%
・1500~2000万円未満:4.5%
・2000~3000万円未満:8.0%
・3000万円以上:15.1%
●60歳代・二人以上世帯の貯蓄割合
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60歳代・二人以上世帯の貯蓄割合は下記のとおりです。
・金融資産非保有:21.0%
・100万円未満:5.9%
・100~200万円未満:4.5%
・200~300万円未満:4.3%
・300~400万円未満:3.0%
・400~500万円未満:1.9%
・500~700万円未満:7.2%
・700~1000万円未満:6.7%
・1000~1500万円未満:6.8%
・1500~2000万円未満:5.4%
・2000~3000万円未満:9.5%
・3000万円以上:20.5%
60歳代で、貯蓄3000万円以上を保有している割合は単身世帯で15.1%、二人以上世帯で20.5%となりました。
一方で、貯蓄が全くない「金融資産非保有割合」は、単身世帯で33.3%、二人以上世帯で21.0%となっており、顕著な貯蓄格差がみてとれます。
特に単身世帯は、貯蓄2000万円以上に幅を広げても、金融資産非保有割合のほうが高くなっており、貯蓄が十分でない世帯のほうが多いのが現状です。
ただし、日本では原則65歳から公的年金の受給が開始されるため、60歳代は「現役世帯」と「リタイア世帯」が混在していることが予想されます。
現役世帯で金融資産がほとんどない場合でも、退職時に退職金を受け取ることができれば、老後の生活を支える資金が確保できる可能性があります。
では、定年退職を迎えている年代である70歳代の貯蓄事情はどのようになっているのでしょうか。
次章にて、70歳代の貯蓄事情を確認していきましょう。