厚生年金と国民年金「働き方ごとの格差」に迫る。一般的な夫婦は約23万円だが「33万円超」のケースも

AI要約

2024年5月13日に行われた厚生労働省の会議では、さまざまなモデルケース別の年金受給額が試算されました。

標準モデルでは、夫が会社員で妻が専業主婦の場合、月額23万483円の年金が受給されることが示されました。

記事では、単身世帯、共働き世帯、片働き世帯などのモデルケース別の年金受給額について詳しく解説されています。

厚生年金と国民年金「働き方ごとの格差」に迫る。一般的な夫婦は約23万円だが「33万円超」のケースも

2024年5月13日に行われた厚生労働省「第15回社会保障審議会年金部会」で、モデルケース別の年金受給額が試算されました。

2024年は、年金の財政状況をさまざまな観点から検証する年です。

では、働き方によって将来いくら年金を受け取れるのでしょうか。

今回は、年金の受給額をさまざまなモデルケース別に解説します。

記事の後半では、公的年金制度にまつわる問題を解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

標準モデルとなっている年金支給額は夫婦合計で月額23万483円です。

モデルとなった夫婦は、夫が会社員で妻が専業主婦だった場合です。

夫のモデルとなっている収入は、平均標準報酬43万9000円で、40年間就業したケースを採用しています。

妻は専業主婦のため、公的年金として受け取れるのは老齢基礎年金のみです。

老齢基礎年金の金額は、満額で6万8000円となっています。

つまり夫の年金額は、23万483円から6万8000円を引いた16万2483円です。

ただ、標準モデルは「平均標準報酬が43万9000円の状態で40年間働いた夫」をモデルにしているため、標準モデルよりも収入が低い人もいるでしょう。

年金部会でも、標準モデルの年金が受け取れると誤解を与える可能性を指摘しています。

そのため、将来の年金額がいくらになるのか、さまざまなケースで提示する必要があるとの意見が寄せられました。

では、他のモデルケース別で受け取れる年金額について確認しましょう。

年金部会では、以下の世帯にわけてモデルケース別の年金額をまとめています。

 ・単身世帯

 ・共働き世帯

 ・片働き世帯

それぞれの世帯におけるモデルケース別の年金額を確認しましょう。

●単身世帯の年金額

単身世帯のモデルケースは、男性と女性の収入を7段階に分けてまとめられています。

国民年金のみ加入している場合とあわせると、8つのケースが提示されました。

それぞれのケースにおける年金受給額は、以下の通りになりました。

(1)54万9000円 (男性の平均的な収入を1.25倍):18万6104円

(2)43万9000円 (男性の平均的な収入):16万2483円

(3)32万9000円 (男性の平均的な収入を0.75倍):13万8862円

(4)37万4000円 (女性の平均的な収入を1.25倍):14万8617円

(5)30万円 (女性の平均的な収入):13万2494円

(6)22万5000円(女性の平均的な収入を0.75倍):11万6370円

(7)14万2000円 (短時間労働者(男女計)の平均的な収入):9万8484円

(8)国民年金のみ加入:6万8000円

総務省統計局が2024年2月6日に調査した「家計調査(家計収支編)」によると、65歳以上の単身世帯における消費支出は、14万9033円となりました。

男性と女性で分けると、以下のとおりです。

 ・男性:15万1182円

 ・女性:14万8028円

年金受給額より、消費支出が多く収支がマイナスになるケースがあります。

 ・男性の平均的な収入を1.25倍:3万4922円プラス

 ・男性の平均的な収入:1万1301円プラス

 ・男性の平均的な収入を0.75倍:1万2320円マイナス

 ・女性の平均的な収入を1.25倍:589円プラス

 ・女性の平均的な収入:1万5534円マイナス

 ・女性の平均的な収入を0.75倍:3万1658マイナス

女性の場合、平均的な収入の1.25倍でもわずか589円しかプラスとなりません。

では、共働き世帯の受給額を確認しましょう。

●共働き世帯の年金額

共働き世帯は、以下のケースに分けてまとめられています。

 ・夫婦どちらもフルタイムで収入を得ているケース

 ・夫婦どちらかが短時間労働者だったケース

それぞれのケースをまとめると、以下のとおりです。

(1)+(4)夫が報酬54万9000円+妻が報酬37万4000円:33万4721円

(2)+(5) 夫が報酬43万9000円+妻が報酬30万円:24万9777円

(3)+(6)夫が報酬32万9000円+妻が報酬22万5000円:25万5232円

(1)+(7)夫が報酬54万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:28万4588円

(2)+(7) 夫が報酬43万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:26万967円

(3)+(7)夫が報酬32万9000円+妻が短時間労働者の平均的な収入:23万7346円

(4)+(7)妻が報酬37万4000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:24万7101円

(5)+(7)妻が報酬30万円+夫が短時間労働者の平均的な収入:23万978円

(6)+(7)妻が報酬22万5000円+夫が短時間労働者の平均的な収入:21万4854円

(7)×2夫婦ともに短時間労働者だった場合の平均的な収入:19万6968円

(8)×2夫婦ともに自営業だった場合の平均的な収入:13万6000円

総務省統計局の家計調査「家計調査(家計収支編)」によると、65歳以上の無職世帯では、消費支出が25万2928円となりました。

夫婦のいずれかが短時間労働者の場合、家計の支出が年金収入を上回ってしまうケースもあります。

最後に、片働き世帯の受給額を確認しましょう。

●片働き世帯

片働き世帯の年金額は、6つのケースに分かれてまとめられています。

それぞれの年金額は、以下のとおりです。

 ・夫が報酬54万9000円+妻が国民年金のみ加入:25万4104円

 ・夫が報酬43万9000円+妻が国民年金のみ加入:23万483円

 ・夫が報酬32万9000円+妻が国民年金のみ加入:20万6862円

 ・妻が報酬37万4000円+夫が国民年金のみ加入:21万6617円

 ・妻が報酬30万円+夫が国民年金のみ加入:20万494円

 ・妻が報酬22万5000円+夫が国民年金のみ加入:18万4370円

「男性の平均的な収入を1.25倍+国民年金のみ加入」の世帯以外は、年金額より毎月の支出額のほうが多くなっています。

以上から、モデルケース別に年金の受給額をみると、夫婦の収入や働き方によっては、年金額が支出額より少なくなる可能性があります。

では、年金のあり方について今後どのような検討が実施されるのか、取りまとめが行われている検討案について確認しましょう。