73歳の親が年金額を多くもらいたいので「繰下げ受給」を利用すると言っていますが、「5年前みなし繰下げ制度」があると聞きました。通常の繰下げ受給とどう違うのでしょうか?

AI要約

公的年金の繰下げ受給制度について詳しく説明されています。遅らせることで増額率が適用され、最長75歳まで遅れると84%増額される仕組みです。

さらに2023年4月から始まった5年前みなし繰下げ制度についても詳細が解説されており、適用対象者や増額率の計算方法などが明示されています。

記事内では、年金受給権の時効や制度の適用条件なども詳しく説明されており、繰下げ受給を検討する際の参考になる情報が含まれています。

73歳の親が年金額を多くもらいたいので「繰下げ受給」を利用すると言っていますが、「5年前みなし繰下げ制度」があると聞きました。通常の繰下げ受給とどう違うのでしょうか?

公的年金は原則として65歳から受け取れますが、繰下げ受給によって年金額を増やしたいと考える人もいるのではないでしょうか。年金の繰下げ受給の年齢は、2022年4月に70歳から75歳が上限に改定されました。

それに伴い、2023年4月に「5年前みなし繰下げ」の制度がスタートしていますが、制度について詳しい内容を把握していない人もいることでしょう。そこで本記事では、5年前みなし繰下げ制度について詳しく解説します。

年金の繰下げ受給とは、原則として65歳からもらえる年金を66歳以降75歳までの間に遅らせて、1ヶ月単位で年金受給額を増やす制度です。年金の受給開始時期を1ヶ月遅らせると0.7%の増額率が適用し、70歳で受け取れば42%、最長の75歳で受け取った場合は84%となり生涯にわたって継続します。

老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれの受給資格がある場合、どちらか一方のみを繰下げる選択も可能です。老齢基礎年金は65歳から、老齢厚生年金は70歳まで繰下げてから受け取るなど、そのときの収入状況を考慮して年金の受取開始時期を決めてみてもよいでしょう。

2023年4月から、5年前みなし繰下げ制度が始まりました。年金の繰下げ受給が70歳から75歳に引き上げられたことに伴い開始し、5年前に繰下げ受給をしたとみなしてくれる特殊な制度です。

年金受給権の時効は、5年間です。例えば、68歳まで繰下げ待機した場合、65歳から68歳までの年金を請求できます。その一方で、例えば73歳で繰下げ待機をすると、年金請求できるのは68歳以降の分までとなります。

この場合、5年前みなし繰下げが適用されれば、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなされて増額された年金の受け取りが可能です。

◆5年前みなし繰下げ制度の対象者

5年前みなし繰下げ制度の対象者は、以下のいずれかに該当する人です。

・昭和27年4月2日以降生まれの人(令和5年3月31日時点で71歳未満)

・老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権取得日が平成29年4月1日以降である

※令和5年3月31日時点で老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権取得日から起算して6年を経過していない人

80歳以降に年金請求を行う、請求の5年前より以前から障害年金や遺族年金の受給権がある場合、5年前みなし繰下げ制度の適用対象外となるため注意が必要です。また、過去の年金を一括受給することで、医療保険や介護保険の自己負担や保険料、税金などを過去にさかのぼるといった影響が発生する場合があります。

◆5年前みなし繰下げ制度適用時に受け取れる年金額の計算方法

73歳0ヶ月で年金請求を行った場合、繰下げ受給によって67.2%の増額率が適用します。老齢基礎年金の場合、満額の81万6000円(月額6万8000×12ヶ月分、2024年度の場合)に67.2%を乗じた54万8352円が加算された136万4352円を生涯にわたって毎年受け取れます。

その一方で、 73歳0ヶ月で過去5年分の年金を請求する場合、68歳0ヶ月時点における増額率である25.2%が適用されます。

老齢基礎年金の2024年度の満額となる81万6000円に25.2%を乗じた20万5632円が増額されて、102万1632円を生涯にわたって毎年受け取れます。さらに5年分の年金をさかのぼった510万8160円(102万1632円×5年)も受け取れます。

ただし、5年前みなし繰下げ制度を利用する場合、請求の5年前の日時点で繰下げ受給の申出があったものとみなし、増額された年金を一括で受け取ることになる点に注意しておきましょう。