交通系ICカードより「タッチ決済」ゴリ押しでいいの? 「外国人にも便利」は本当か 海外の“現実”

AI要約

タッチ決済が急速に広まり、交通系ICカードが不要になる可能性がある。

ロンドンでは週間キャップが導入されたことでタッチ決済が大成功し、定期券利用者が激減。

日本でも週間キャップ導入がタッチ決済の普及に貢献する可能性がある。

交通系ICカードより「タッチ決済」ゴリ押しでいいの? 「外国人にも便利」は本当か 海外の“現実”

 クレジットカードやデビットカードなどを駅の改札にピッとかざして電車に乗る「タッチ決済」が急速に広まっています。首都圏では2023年に江ノ島電鉄が全線にタッチ決済を導入したほか、東急線では2024年5月から首都圏大手私鉄で初めて、全駅で普通運賃の支払いに使えるようになりました。東京メトロも2024年度中に実証実験を開始すると発表しています。

 

 タッチ決済が進めば交通系ICカードがいらなくなるとも言われます。実際に海外で先行しているのは、ロンドンです。ここから日本が学べることはないのでしょうか。

 ロンドンでは、2014年にタッチ決済が導入されて以降、利用者数は右肩上がりに伸び続け、現在は1日平均500万件の支払いがタッチ決済で行われています。これは、全決済の6割近くになります。

 その大成功の主な要因は、2014年の導入時にタッチ決済のために創設された「週間キャップ」という制度です。「キャップ」とは、「蓋(ふた)をする」の意味で、つまり、1週間にタッチ決済で交通機関を何度も利用した場合、ある一定の金額以上は、課金されないという仕組みです。

 この登場により、それまで「シーズンチケット」という定期券を購入していた客層が一気にタッチ決済へ移行しました。2014年度は4657万件あった定期券の販売件数は、コロナ禍前の2018年度にはほぼ半減。コロナ禍で業務形態の多様化が進んだ影響も加わり、現在の定期券の利用者はタッチ決済が始まる前の約4分の1にまで減少しています。

 現在導入されている日本のタッチ決済には、週間キャップありません。日本でも公共交通機関を利用する人の大半が通勤・通学であることを考えると、週間キャップが導入されればタッチ決済が増えるかもしれません。

 では、ロンドンでの交通系ICカードからタッチ決済への移行はどうでしょうか。

 ロンドンではタッチ決済導入で「定期券離れ」が顕著になった反面、実は意外なことに、日本のSuicaやPASMOなどの交通系ICカードに相当する「オイスターカード」にお金をチャージして公共交通機関を利用する顧客層の減り幅は、2割程度にとどまりました。