個人事業主「まさか領収書を1枚1枚見ることはないよね?」…⇒いいえ、そのまさかです。税務調査官の“目のつけどころ”に驚愕【税理士が解説】

AI要約

税務調査は納税者の申告が適正に行われているか確認するための調査であり、任意調査と強制調査の2種類が存在する。

税務調査では領収書の内容や金額の正確性だけでなく、不正や架空計上などもチェックされる。特に個人事業主は生活費と経費の区別が重要である。

税務調査の流れは、税務署からの事前連絡、調査実施日の決定、必要書類の準備、調査実施、質問への回答、調査結果の通知といったステップを踏む。

個人事業主「まさか領収書を1枚1枚見ることはないよね?」…⇒いいえ、そのまさかです。税務調査官の“目のつけどころ”に驚愕【税理士が解説】

税務調査の対象になると、領収書や帳簿などの書類が税務調査官にチェックされることになります。領収書は膨大な枚数になっているでしょうから、「まさか1枚1枚見ないよね?」と考える方もいるかもしれません。しかし領収書は基本的には全部見ると思っておきましょう。税務調査官が領収書のどんな点を調べているのか、領収書以外にはどんな書類が調査の対象になるのか。また、税務調査の流れや内容はどのようなものか。税理士法人松本が解説します。

税務調査とは、納税者の申告が適正に行われているかを確認するための調査です。税務調査をすると言われると不正をしていなくても、身構えてしまう人もいるでしょう。税務調査の目的や流れについて、正しく理解をしておきましょう。

■税務調査の目的

税務調査の目的は、納税者が正しく申告をしているかどうかを調べるものです。悪意がなくても確定申告でミスをしてしまう場合があるかもしれませんし、中には故意に不正をしているケースもあります。申告内容に誤りがないか確認し、正しく納税している人との不公平感が生じないように正しい申告・納税ができるように指導していきます。

■税務調査の種類

税務調査は、任意調査と強制調査があります。

任意調査:

⇒任意調査とは、納税者の同意のもと行われる調査で、いわゆる一般的な税務調査です。事前に税務署から連絡があり、2日間で帳簿などの資料が調べられます。「任意」という名前がついてはいますが、拒否をすると罰則の対象となりますので拒否はできません。

強制調査:

⇒強制調査は、不正や脱税の疑いがある納税者を対象としたもので、裁判所の令状を得た国税局査察部による調査です。刑事事件として立件することが目的であり、「マルサ」と呼ばれる査察部門です。強制捜査では100~200人の税務調査官が投入されるため大規模なものとなります。一般的には多くの税務調査が任意調査となっています。

■税務調査の時期

税務調査に明確な時期はありませんが、以下のような傾向があります。

●確定申告後の4~5月頃

●国税局や税務署の人事異動が終わる7月~11月頃

会社の決算時期にもよりますが、日本は3月決算法人が多数を占めるため7月~11月が調査の件数が多くなる時期となっています。7月~11月に行われる税務調査は、税務調査官の営業成績に影響がある時期であるといわれています。

■税務調査の流れ

税務調査は、企業だけでなく個人事業主に行われる場合もあります。いつ調査の対象になっても不思議ではありませんので、税務調査の流れについて確認しておきましょう。

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<税務調査の流れ>

(1)税務署から事前連絡がくる

(2)調査実施日の日程を決める

(3)必要書類を準備する

(4)店舗や事務所に税務調査官が訪れ、調査が行われる

(5)税務署からの質問に答える

(6)調査結果の通知

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任意調査の場合は税務署から事前に電話連絡がありますので、その電話で日程を決めます。税務調査当日は税務調査官が店舗や事務所に訪れ、社長や経理、顧問税理士への質問が行われます。訪問後も指摘や質問があれば、必要な資料を準備したり、適切な回答をしたりします。「申告是認」「修正申告」「更正」の3パターンの結果により、必要があれば追従課税を支払います。

■税務調査での領収書チェック

「税務調査で領収書は全部見るのか?」と疑問に思われる方も多いようです。全ての領収書を1枚1枚チェックするなんてあり得ないと思うかもしれませんが、基本的には全ての領収書がチェックされると思っておきましょう。

領収書のチェックは、金額だけではありません。どのような点を確認されているのかを把握しておきましょう。

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<金額以外のチェックポイント>

●内容・中身の確認

●不正がないか

●売上の記入漏れがないか

●架空計上がないか

●資産計上すべきものがないか

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■内容・中身の確認

税務調査で領収書を見る時には、買い物の内容をチェックしています。私的な買い物がないか、生活費に関連する買い物が混ざっていないかという点です。個人事業主だと、特に生活費と経費のボーダーラインが曖昧になりがちです。例えば、ドラッグストアやスーパーで買い物した商品が、本当に事業に関係のあるものなのかを細かくチェックされています。小さなレシートであっても、記載内容が確認されていると覚えておきましょう。

■不正がないか

数字の改ざんなどの不正がないか、金額は正しく申告されているかという点です。数字を書き換えているとボールペンのインクの色合いなどから、簡単にバレてしまいます。主に筆跡・金額改正・日付けをチェックされています。

■不自然な筆跡はないか

偽造された領収書が申告されていないかをチェックするため、不自然な筆跡がないかという点を見られています。「自分で架空の領収書を作成している」「お店で空の領収書をもらっている」という場合は、筆跡が同じなので税務調査が入るとバレやすくなります。

「別のお店なのに筆跡が同じである」「同じお店の領収書で日付けが離れているのにボールペンの色合いや筆跡が同じである」という場合は、不正が疑われやすくなります。

■数字の金額不正はないか

領収書の金額を割増しするために、後から領収書の金額を不正に改ざんされていないかをチェックします。例えば、「1を4に書き足す」「1,000円の領収書を11,000円に改ざんする」というようなケースが多くみられます。印字された領収書よりも、手書きの領収書の方が改ざんされやすいです。数字の改ざんを疑われると、反面調査として取引先やお店側に調査が入る場合もあります。

■不自然な日付はないか

領収書の日付から不正がバレるケースもあります。例えば、曜日をチェックして、日曜日に飲食店の領収書があれば接待ではなく家族での外食ではないかと疑われます。出張中のため不在なはずの場所で領収書があると、おかしいと気付くでしょう。

他にも、同じ日にガソリンスタンドで2台分の給油をしていると、社用車と自家用車の双方の給油があったという事実も見抜かれてしまいます。

■売上の記入漏れがないか

現金でのやり取りがある場合は特に詳細を確認されるでしょう。売上の記入漏れを疑われないようにするには、「現金で収受したものは早めに事業用の通帳に入金する」「現金でのやり取りを極力少なくする」という点を心がけましょう。

法人で社長の個人用の通帳に売上の入金があるというケースも、疑われやすいです。故意に売上を抜いていると疑われないよう、事業用の通帳上で売上の管理をしていくようにしましょう。

■架空計上がないか

領収書の架空計上がないかという点も、重要なチェック項目です。そもそも存在しない経費を計上するのは、違法行為となります。白紙の領収書に金額を記入した際に水増ししていないか、または「外注費」という科目が注目されやすいので内容を細かく確認されるかもしれません。

■資産計上すべきものがないか

経費として購入した物が10万円以上になる品目は、一括で経費計上せずに減価償却資産として扱わなければいけません。車両や機械設備等は資産となり、資産計上が必要な品目となります。適切に減価償却処理が行われているか、税務調査でチェックの対象となるでしょう。