「出ていけ」と言われても切り開いた新規事業 養鶏場の婿養子が貫いた信念 #令和に働く

AI要約

伊藤養鶏場は、ブランド鶏の「東京うこっけい」など約5700羽を飼育しており、卵や肉の質を高める取り組みを行っている。

3代目の伊藤彰さんは結婚を機に妻の家業に入り、鶏舎の管理から加工商品の開発まで幅広い業務を手がけている。

伊藤養鶏場は、品質向上と販路拡大を図り、売り上げを5倍に伸ばしている。

「出ていけ」と言われても切り開いた新規事業 養鶏場の婿養子が貫いた信念 #令和に働く

 東京都立川市の伊藤養鶏場は、ブランド鶏の「東京うこっけい」など約5700羽を飼育しています。3代目の伊藤彰さん(41)は結婚を機に妻の家業に入り、鶏舎の衛生管理やエサの配合などを改善。卵や肉の質を高め、生産だけでなく自ら営業に励んで販路を開拓しました。経営方針を巡って義父と大げんかした末に3代目となり、都内の有名料理店などとそぼろ肉やプリンなどの加工商品も開発。ブランド力を高めて、売り上げを5倍に伸ばしました。

 伊藤養鶏場は伊藤さんの妻の祖父が50年以上前、数十羽の鶏を飼い始めて創業しました。義父の代で規模を拡大しますが、全国的な卵余りで縮小。それまでの鶏をすべてやめ、新しく改良されたウコッケイの品種「東京うこっけい」の飼育に切り替えました。

 現在、東京うこっけいと赤玉鶏卵を産む「もみじ」という鶏を約5700羽飼育し、ウコッケイの卵2種類、鶏の卵1種類、そして加工食品用にウコッケイのオスの肉を生産しています。卵は黄身がぷっくりして色が濃く、味も濃厚なのが特徴です。

 伊藤さんは「成長に合わせ、エサの配合を変えています」。ベースとなるエサにはパプリカやマリーゴールドの花弁の粉末などを配合し、濃い黄身の色を出しています。「極烏プレミアム」という卵を産むウコッケイのエサには、味にコクを出すため魚粉や海藻を混ぜています。ごまもエサに入れることでぷっくりとした卵になり、栄養価も高まるそうです。

 商品は百貨店や、イタリア料理の名店「アルヴェアーレ」(東京・麻布十番)をはじめとする有名料理店に卸しています。従業員は10人(パートを含む)です。

 伊藤さんは母の実家が農家でしたが、「まさか自分がやるとは思いませんでした」。高校卒業後、住宅設備会社などを経て不動産業に就き、東京都東大和市を中心に営業しました。やりがいを感じ、独立することが目標になりました。

 そのころ、同僚が義父と懇意になったことから今の妻を紹介され、交際に発展。長男を授かり結婚の許しを得るためあいさつに行くと、義父から「婿に入って養鶏場を継いでほしい」と言われました。

 「子どもも授かっていますから『はい』と言うしかないですよね。やるならとことんやろうと思いました」。伊藤さんは2011年に結婚し、伊藤養鶏場に入りました。