流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる

AI要約

東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」がJR東海の線路に乗り入れ、2024年から新たなツアーを始める。

「THE ROYAL EXPRESS ~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~」は富士山の景色を楽しみながら静岡県を巡る豪華列車で、旅行代金は希望者多数の場合には抽選となる。

東急グループが運営する「THE ROYAL EXPRESS」は、リゾートホテルを想起させるデザインの難燃素材をふんだんに使用し、座席車、イベントスペース、キッチンカー、ダイニングカーなどを備えた贅沢な列車だ。

流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる

 東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」がJR東海の線路に乗り入れる。ツアー名は「THE ROYAL EXPRESS ~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~」(以下、SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN)だ。

 2024年5月30日に静岡駅前のホテルで記者発表会が開催され、JR東海の丹羽俊介社長と東急の堀江正博社長が登壇した。JR東海にとって観光列車ビジネスの始まり。東急にとっては新たな走路の獲得だ。特に東急には「熱海から西へ走らせたい」という強い希望があったという。

 2024年11月から12月にかけて、毎週金曜日に横浜駅を出発し、三島、沼津、浜名湖、静岡、日本平を巡って横浜駅に戻る。東海道本線を行ったり来たりしながら、富士山の景色を楽しみ、東海道の歴史と景勝地を訪ねる。東急にとって、伊豆、北海道、四国に続く4番目のクルーズ。JR東海にとって初のクルーズトレイン運行となる。

 旅行代金は、宿泊施設を2名1室で利用する場合で75万円から。1名1室で利用する場合は105万円から。使い古された言葉だけど「豪華列車の旅」である。申し込み受付が始まっており、希望者多数の場合は抽選となっている。

 これで、JR旅客会社の6社すべてがクルーズトレインを経験することになった。いままでクルーズトレインを運行しなかったJR東海にとって大きな経験になる。また東急は、クルーズトレイン運行会社として新たなルートを開拓した。乗客は、日本の観光の大きなコンテンツ「富士山」の眺望を列車や宿で楽しめる。三方良しである。いや、運行ルートの静岡県も観光の魅力を発信できる。四方良しだ。

 「THE ROYAL EXPRESS」は、東急が2017年から横浜発、伊豆下田行きとして運行しているクルーズトレインだ。ここでいう東急は東急電鉄の親会社で、東急グループをとりまとめる会社だ。

 「THE ROYAL EXPRESS」は東急グループの伊豆急行が製造した2100系電車「リゾート21」を改造して作られた。改造も東急グループの東急テクノシステム長津田工場で行われた。ツアーの企画、催行は東急が実施する。申し込みは公式サイトで受け付けており、東急と伊豆急行が共同で運営している。東急グループの総合力を結集したクルーズトレインだ。

 東急グループは鉄道、不動産、生活流通のほか、旅行業、リゾート開発も手がけてきた。特に伊豆は伊豆急行という鉄道会社も設立して、リゾート開発を進めてきた。しかし東急電鉄の路線とはつながっていない。ならば列車で結んでしまおう。それが横浜発伊豆急下田行きの「THE ROYAL EXPRESS」である。

 東京と横浜と伊豆を結ぶ列車は、JR東日本が特急「踊り子」をたくさん走らせている。「スーパービュー踊り子」(2020年廃止)というハイグレード列車もある。しかし、東急電鉄(当時)自身が運行することに意義がある。

 「踊り子」と差別化するためにも、東急のシンボルとなるハイグレード列車が必要だ。座席の販売だけではなく、食事やリゾートと組み合わせたクルーズトレイン方式としたい。しかし、横浜~伊豆急下田間は距離が短く車内宿泊はふさわしくない。そこで車内はテーブル付き座席が主体となった。

 車両のデザインは、JR九州で「ななつ星in九州」「或る列車」などを手がけた水戸岡鋭治氏が担当した。木材などの天然素材を難燃(なんねん)処理(燃えにくい材料へと加工処理を行うこと)してふんだんに使い、リゾートホテルのロビーやラウンジを想起させる。いわゆる「水戸岡デザイン」の発展型ともいえる。

 8両編成のうち座席車は4両のみ。1両はマルチカーと呼ばれるイベントスペース、1両は加熱調理可能なキッチンカー、残り2両はダイニングカーとなっている。合計定員100名という贅沢(ぜいたく)な仕様だ。

 ツアーは伊豆の高級旅館、リゾートホテルを組み合わせた1泊2日の「クルーズプラン」と宿泊なしの「食事付き乗車プラン」があり、クルーズプランは2名1室で1名当たり13万5000円から。食事付き乗車プランは2万5000円から(2017年の料金)。

 かくして、東急によるクルーズトレインは走り出した。