「突拍子もなかった」惣菜業で補助金採択 縫製業が紡ぎ出した”強み”

AI要約

佐藤縫製は新たな移動販売事業を始め、事業再構築補助金を活用して好調な滑り出しを見せている。

創業36年の伝統ある会社が新型コロナの影響で売上減少に直面し、新しい事業の検討に着手。

創業3代目の黒澤理紗さんが栄養士の資格を生かし、地元野菜を活用した惣菜を製造し、移動販売を始めることを決断。

「突拍子もなかった」惣菜業で補助金採択 縫製業が紡ぎ出した”強み”

 秋田県湯沢市で産業用資材などの縫製業を営む佐藤縫製は、創業3代目の黒澤理紗さんが中心となり、惣菜を製造して移動販売をする新規事業を始めたところ、好調な滑り出しを見せています。当初、事業再構築補助金を申請するにあたり「突拍子もない事業を始めると見られかねない」と感じましたが、経営相談窓口の湯沢市ビジネス支援センター(ゆざわ-Biz)で佐藤縫製の強みを掘り下げていくと「地域課題解決」「社員の働き方改革」「SDGs」というキーワードへと次々つながり、二度目の申請で事業再構築補助金に採択されました。事業アイデアを磨き上げた過程を紹介します。

 創業36年の佐藤縫製は、防災製品の縫製加工のほか、酒袋の縫製など、産業資材の縫製を得意とする会社です。

 産業資材は、縫製業界でも特異な技術が必要とされ、社員の過半数は勤続15年を超えるベテラン縫製技術者がそろいます。また、アパレル向けと異なり、産業資材という消費者市場に左右される要素の少ない安定した業態でした。

 しかし、2020年以降の新型コロナによる緊急事態宣言の影響で、それまで売り上げを支えていた主要な顧客である酒造メーカーからの注文が激減したほか、佐藤縫製の主力仕入れ先でもある中国の反物工場がコロナによる稼働・出荷停止となり、原材料の仕入が不可能となったことで、一時的に売上が減少しました。

 そこで「いつでも不測の事態に備えることができるよう10年後を見据えて今のうちに何か新しい事業を始めておこう」と、新規事業の検討を始めました。

 創業3代目にあたる黒澤理紗さんがゆざわ-Bizに訪れたのは、新型コロナの影響が大きかった2020年10月。

 黒澤さんは栄養士ということもあり「地元でとれた野菜などを利用した惣菜を作って、それを移動販売できないか」という相談でした。当時はコロナ禍ということもあり、テイクアウト需要も多く、当時黒澤さんとしては「ニーズはあり、食品分野は自分の夢でもあったので、なんとなくできるのかどうか相談してみた」という感覚だったそうです。

 その後、社内で検討した結果、当時は採択率が低く「狭き門」でもあった事業再構築補助金の申請手続きを開始します。