中国軍による台湾包囲演習はこけおどし、実戦なら台湾のミサイルの好餌

AI要約

台湾で頼清徳総統の就任式が実施され、総統は中華民国台湾の主権独立を強調。

中国は反発し、台湾周辺で軍事演習を行ったが、実際に台湾封鎖が可能か疑問が残る。

過去の演習と比較しながら、中国の軍事行動の意図を分析する必要がある。

 台湾で頼清徳総統の就任式が5月20日、台北で実施された。

 その時、頼清徳総統は「中華民国台湾は主権独立国家である。(中略)中華民国と中華人民共和国(中国)は互いに隷属していない」と国際社会に向け発言した。

■ 1.中国軍演習区域設定への疑問

 中国はこの発言に反発して、5月23~24日の2日間、統合演習「連合利剣2024A」を実施した。

 中国軍の東部戦区(台湾対岸の戦区)報道官によれば、今回の軍事演習の目的は台湾独立分裂勢力を懲らしめ、外部勢力の干渉や挑発に対して厳重に警告するものだという。

 そして、中国の軍事演習区域(図1参照)を、台湾の全周および台湾の離島で中国に近い金門島・馬祖列島等を取り囲むように設定し示した。

 図1 中国軍の演習海域(2024年5月23~24日)

 軍事演習海域の図が、日本のテレビ・新聞などのメディアに大量に流れた。私は、この情報に中国の作為的な意図を感じた。

 なぜなら、中国軍の今回の動きは平時にはできるだろうが、ミサイルが飛び交う有事にできるのかという疑問を持ったからである。

 台湾に脅威を感じさせる中国軍の情報戦ではないかと思ったのである。

 そこで、両軍が戦う有事に、中国軍は本当に今回の演習での動きができるのか分析してみた。

■ 2.今回の中国軍演習の実際の動き

 台湾国防部の発表によれば、中国軍が台湾周辺海域で活動したのは、5月23日には空軍機49機(中間線超え35機)、海軍等艦艇26隻、海警局船7隻、5月24日には空軍機62機(47機)、海軍艦艇27隻であった。

 この演習は、東部戦区司令部が陸軍、海軍、空軍、ロケット軍などの部隊を組織し、台湾島周辺で協同訓練を実施し、軍部隊の統合作戦能力を検証したものである。

 この作戦の目的は、「台湾独立」を主張する勢力を懲らしめ、外部勢力による干渉を阻止することとしている。

 この指揮は、中国軍全体を統括する統合司令部ではなく、台湾の対岸である東部戦区(5つのうち1つ)司令部が実施したものである。

 全軍による統合ではなく、戦区という局地的演習だった。

■ 3.ペロシ米下院議長の訪台時の演習と比較

 2022年8月2~3日のナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の訪台時、中国の対応はどうだったのか。

 中間線超えは8月3日に48機、8月4日に22機、8月5日に49機であり、艦艇の台湾への接近は、空軍機よりも遅れて出現し、8月6~8日までは、毎日13~14隻、その後10日までは10隻であった。

 また、台湾周辺に演習範囲を5か所設定し、弾道ミサイルを撃ち込んだ。

 図 中国軍の演習海域今回(赤色)とペロシ訪台時(灰色)

 ペロシ下院議長の訪台時と今回のものを比較した。

 台湾を取り囲むように設定した演習海域を図で見ると、位置は異なるものの、台湾を包囲するという形は同じである。

 つまり台湾を封鎖するというイメージである。

 しかし、これらの中国軍の行動は、軍事的に見て台湾封鎖が可能なのか疑問を持った。