尹大統領、10回目の拒否権…韓国最大野党代表「尹=犯人」と呼ぶ

AI要約

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が野党単独で強行処理した「殉職海兵真相究明妨害および事件隠蔽等の真相究明のための特別検事任命法」に対し拒否権を行使し、憲法違反と主張。

野党と大統領の対立が激化し、野党は弾劾の可能性を示唆。李在明代表は尹大統領を攻撃し、沈静化の見通しが立たない状況。

再議決が28日に予定され、国民の力党が離脱票を管理。与党と野党が法案を巡って激しい対立構図。

尹大統領、10回目の拒否権…韓国最大野党代表「尹=犯人」と呼ぶ

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が野党単独で強行処理した「殉職海兵真相究明妨害および事件隠蔽等の真相究明のための特別検事任命法」(チェ上等兵特検法)に21日、再議要求権(拒否権)を行使した。これに対し最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は「尹大統領が特検を拒否しただけに犯人ということを自白するものだ。その犯行に対して責任を問わなければいけない」と激しく攻撃した。野党が事実上、弾劾の推進を示唆し、双方の衝突はさらに激化するとみられる。

この日午後、大統領室は尹大統領のチェ上等兵特検法に対する拒否権行使を伝えながら野党に照準を合わせた。鄭鎮碩(チョン・ジンソク)秘書室長はブリーフィングで「今回の特検法案は憲法の精神に合わない」と指摘した。特に過去25年間の13回の特検法はすべて与野党の合意に基づいて処理したとし、「これは単に与野党協治の問題でない。数十年間守ってきた重要な憲法慣行を破壊するものだ」と述べた。

そして「特検制度は捜査機関の捜査が不十分であったり捜査の公正性または客観性が疑われたりする場合に限り補充的・例外的に導入できる制度」とし「現在、警察と高位公職者犯罪捜査処捜査が引き続き進行中」と話した。特に高位公職者犯罪捜査処が文在寅(ムン・ジェイン)政権で設置された捜査機関という点を強調しながら、「今の高位公職者犯罪捜査処の捜査は信じられないとして特検導入を主張するのは、自ら設けた高位公職者犯罪捜査処の存在理由を否定する自己矛盾であり自己否定だ」と主張した。

今回の特検法案が特検候補者推薦権を野党に独占的に付与して大統領の特別検事任命権を基本的に剥奪し、随時ブリーフィングをし、法律上禁止された被疑事実公表を認めることにした点も指摘した。「チェ上等兵の無念の死がこれ以上、政争の素材にならないことを望む」とも伝えた。

チェ上等兵特検法は2日の国会本会議で民主党など野党単独で強行処理され、7日に政府に渡ってから14日ぶりに拒否権が行使された。尹大統領の拒否権行使は10回目となる。

ただ、今までの尹大統領の拒否権が「野党の立法独走vs大統領拒否権」という構図だったなら、今回は「大統領拒否権vs野党の弾劾推進」へとさらに激しくなる状況だ。李在明代表が拒否権を行使した尹大統領を「犯人」と呼んだのに続き、「尹錫悦政権は波の前に帆船のような状況」と攻撃した。曹国(チョ・グク)祖国革新党代表は「李承晩(イ・スンマン)の末路を忘れてはいけない」と大統領の下野を暗示したりもした。

野党は左派市民団体と連合で今週末から場外闘争をする計画だ。パク・ソクウン全国民衆行動共同代表は「我々が朴槿恵(パク・クネ)独裁政権をどうやって追い出したのか、ろうそく抗争で追い出したのだ」とし「尹錫悦検事独裁政権も第2のろうそく抗争で、25日に始まるろうそく抗争がたいまつになって街中を満たすよう力を集めよう」と主張した。

チェ上等兵特検法の再議決は28日に予定されている。国民の力は特検法否決のカギとなる党内「離脱票」の管理に注力している。

再表決の可決要件は在籍議員(296人)の過半数出席に出席議員3分の2以上の賛成票だ。現在拘束収監中である無所属の尹官石(ユン・グァンソク)議員を除いた在籍議員は295人であり、全員が出席する場合は197人が賛成しなければならないが、民主党(155議席)をはじめとする野党圏の議席をすべて合わせても可決要件に達しない180議席だ。ただ、無記名で行われる再表決で国民の力議員(113人)のうち17人が賛成票を投じる場合、特検法は通過する。

このため国民の力の秋慶鎬(チュ・ギョンホ)院内代表と尹在玉(ユン・ジェオク)前院内代表は第22代総選挙の公認落ち・不出馬議員58人を一人ずつ説得している。ひとまず党指導部は現在、公開的に賛成の意思を明らかにした安哲秀(アン・チョルス)議員、兪義東(ユ・ウィドン)議員、金雄(キム・ウン)議員ら一部を除いて離脱票なく否決されると期待している。秋慶鎬院内代表はこの日、記者らに「すべての議員と個別に接触している。大きな異常気流は見られない」と話した。

半面、民主党は特検法に対する高い賛成世論に言及しながら、与党議員を説得して離脱票を狙うという戦略だ。28日の本会議で該当法案が否決になっても第22代国会で「1号法案」として再推進するという態勢だ。

専門家らは与野党の対立がさらに深まるとみている。仁川大のイ・ジュンハン政治外交学科教授は「大統領は政治でなく法理だけを、野党は世論を背にして支持者だけを考え、お互いの主張が衝突している状況」とし「第21代国会の最後のこうした激しい衝突が第22代国会では日常化するという点で韓国政治はさらに絶望的だ」と述べた。