イラン大統領死亡、想定外の次期大統領選へ保守強硬派が後継者擁立急ぐ…将来の最高指導者視野に

AI要約

イランのエブラヒム・ライシ大統領がヘリコプター事故で死亡し、想定外の次期大統領選に向けて動き出す。ライシ師は有力な最高指導者候補だったため、後継者選びには保守強硬派陣営の思惑が絡む。

2021年に大統領に就任したライシ師は、米国との対抗姿勢を示し、核交渉で妥協を拒み、友好国との関係強化を図っていた。その政治姿勢から後継者選びには注目が集まる。

ライシ師の死去により、後継者選びが焦点となり、最高指導者の後継も視野に入れられる。各派閥は既に次期大統領選挙に向けた準備を進めている。

 【テヘラン=吉形祐司】イランのエブラヒム・ライシ大統領がヘリコプター事故で死亡し、イランは想定外の次期大統領選に向けて動き出す。ライシ師は将来の最高指導者候補として有力視されていたことから、後継者選びには保守強硬派陣営内の思惑が絡んだ駆け引きが予想される。

 2021年にライシ師が大統領に就任した当時、核開発疑惑をめぐる米国の制裁が再開していた。対話路線の保守穏健派ハッサン・ロハニ前大統領がまとめた核合意が18年にトランプ米政権の一方的な離脱でほごにされ、対米不信から保守強硬路線が先鋭化した。

 ライシ師は、大統領として米国への対抗姿勢を崩さなかった。ロシアや中国などの友好国との関係強化で米国などによる制裁の影響を抑えようと試み、保守強硬路線による生き残り策を模索した。

 核交渉では妥協せず、制裁が解除されなくても経済対策で成果を上げることを目指した。最高指導者のアリ・ハメネイ師は、業績に異例の賛辞を贈るなど全幅の信頼を置いていた。

 ライシ師は、来年8月で1期目の任期4年が満了する予定だった。3月の国会議員選挙では保守強硬派が圧勝し、ライシ師は支持基盤を強固にしていた。来年の大統領選に出馬すれば再選はほぼ確実とみられていたため、後継が表だって議論されることはなかった。

 政治姿勢は「革命至上主義」とも言えた。1979年のイスラム革命直後から検察官として頭角を現し、80年代には反革命政治犯の大量処刑にかかわったと指摘される。2022年には女性の髪を隠すスカーフ「ヘジャブ」抗議デモを弾圧し、人権団体は500人以上が死亡したとしている。

 こうした点が84歳と高齢のハメネイ師の後継候補として浮上する根拠にもなっていた。ライシ師の後継選びでは、最高指導者の後継も視野に入れた候補者の選定が行われるとみられる。

 ゴナバド大学(イラン)のモハンマド・ホセイニ教授は「次期大統領は、次期最高指導者の指名に影響力を持つことになる。改革派も積極的に参加するかもしれない」と大統領選の重要性を指摘した。選挙までの期間が50日と限られることから、「各陣営は、すでに選挙準備を始めているだろう」と語った。