米、台湾との「非公式関係」深め中国を抑止 トランプ前政権閣僚は「戦略的曖昧さ」を批判

AI要約

米国務長官は台湾の新総統就任を祝福し、台湾との関係強化を強調。

米政府は台湾への軍事支援を続け、中国の台湾侵攻に備えた抑止力を高める方針。

中国の軍事的脅威に対し、米国の抑止力が低下している懸念が高まっている。

【ワシントン=渡辺浩生】台湾の頼清徳・新総統が20日に就任したことを受け、ブリンケン米国務長官は米東部時間19日、就任に祝意を伝えるとともに「長年の非公式な関係を深め、台湾海峡の平和と安定を維持していく」とする声明を発表した。バイデン政権は中国による台湾の武力統一を視野に、引き続き軍事支援の強化を通じて抑止力を高めていく構えだ。

■就任式に超党派代表団を派遣

ブリンケン氏は声明で、頼氏の就任に関し、「台湾の人々が民主主義体制の強靭さを改めて示したことに祝意を表する」とした。その上で「民主主義の価値に根差した米国人と台湾人のパートナーシップ」を貿易、経済、文化などの各分野で拡大させると強調。さらに、蔡英文前総統が8年間にわたり米台関係を強化してきたと称えた。

米政府は就任式にアーミテージ元国務副長官ら超党派代表団を派遣。中国の軍事的威圧が続く台湾を支える姿勢を強調する。

クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)は4月30日、上院公聴会で「中国は台湾の武力統一の選択肢を放棄せず、外交・情報・軍事・経済上の圧力を強めている」と指摘。「脅威に対処するため政権は広範囲な手段を使い中台間の抑止力強化に注力している」と訴えた。

バイデン政権は「台湾海峡の現状維持」のため武器供与・売却の増強に加え日米同盟を軸にインド太平洋の同盟諸国との連携を駆使した抑止力向上を強調。台湾、ウクライナ、イスラエル支援のための緊急予算も先月成立した。

■米国防予算は実質減

しかし、台湾侵攻に備える中国への抑止力低下の懸念が野党・共和党を中心とした超党派で高まっている。中国の艦船建造や中距離ミサイル配備の加速で米中軍事バランスが急激に変化しているからだ。米シンクタンク「ハドソン研究所」のウォルター・ラッセル・ミード氏は、中国など現状変更勢力への抑止力の衰退は「米外交政策最大の問題」と警告する。

専門家が懸念するのは、政権が3月に要求した2025会計年度の国防予算だ。前年度比約1%増で物価上昇分を差し引けば実質減。米メディアによると、戦闘機やミサイルの購入や空母、潜水艦の発注に影響が出る。先月、議員辞職した共和党のギャラガー前下院中国特別委員会委員長は米外交誌への共同寄稿で「政権はただちに方針を変更すべきだ」と訴えた。