「頭のいい人ほど陰謀説にだまされる」 米国懐疑論者の権威マイケル・シャーマー氏

AI要約

米国で発生した「ピザゲート」事件をきっかけに陰謀説が社会に与えるリスクについて考察。科学的懐疑主義運動団体の創設者であるマイケル・シャーマー氏が解説。

韓国においても陰謀説が広まっており、特に北朝鮮に関連したものが多いことが指摘された。ソーシャルメディアの普及により陰謀説の拡散が加速している現状。

頭の良い人ほど陰謀説に陥りやすいという事実や、政治家が陰謀説を利用して自らの政治的利益を追求する問題点について議論された。

「頭のいい人ほど陰謀説にだまされる」 米国懐疑論者の権威マイケル・シャーマー氏

2016年12月4日、当時28歳のエドガー・ウェルチという男性が米国ワシントンDCにあるピザ店「コメット・ピンポン」に押し入り、銃器を乱射する事件が起きた。ウェルチは民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン率いる組織がこの店の地下室で児童を性的に虐待していて、ドナルド・トランプ前大統領は世の中を救う救世主だと信じる「Qアノン陰謀説」の信奉者だった。だが、この飲食店には児童虐待犯はもちろん地下室さえなかった。

「ピザゲート」と呼ばれるこの事件は、現代社会に知らず知らずのうちに入り込んでいる陰謀説がどのように共同体を危機に陥れることができるのかまざまざと見せつけた事例だ。『なぜ人はニセ科学を信じるのか』、『Conspiracy: Why the Rational Believe the Irrational(陰謀:なぜ合理的な人が非合理的なことを信じるのか)』などの本を著したマイケル・シャーマー氏(70)は30余年間このような陰謀説を分析し、対抗してきた学者だ。シャーマー氏は1997年科学的懐疑主義運動団体「The Skeptics Society(懐疑派協会)」を創立して、懐疑主義科学ジャーナル『Skeptic(スケプティック)』を創刊した。9~13日に開催された世界知識フォーラムに出席するために韓国を訪れたシャーマー氏と13日に会った。

--韓国にも陰謀説が多いのは知っているだろうか。

「研究者として接した韓国の陰謀説は北朝鮮に関連したものが多かった。昨日DMZに行って第三トンネルを訪問したが非常に印象的だった。最初はこのトンネルが何のためのものなのか諸説あったが、結局北朝鮮が攻撃のために掘ったという陰謀説が事実であることが明らかになった。このように陰謀説が真実だと分かった場合、人々は関連する陰謀説にもっと簡単に陥ることになる」

--最先端科学の時代だが、非理性的な陰謀説はさらに増えている。

「過去に比べて多くの陰謀説が発生しているという統計はないがソーシャルメディア(SNS)の発達で陰謀説がよりスピーディーに拡散しているのは確実だ。1960年代ケネディ暗殺陰謀説はニュースレターや本などを通して数年かけて知らされたとすると、今はブログの記事や動画一つで一日に100万人以上の人々に拡散することができる」

--「頭の良い人ほど陰謀説に陥りやすい」ということだが。

「ある陰謀説が人々の知性に触れ、しっかりとした論理を備えていれば頭の良い人はこれを深く信じるようになる。頭が良い人であるほど十分に理解されていない現実を論理的に概念化しようとする欲求が強いためだ。ホロコースト否定論者や9・11テロを米国政府が起こしたと信じる人々の中にも高い教育水準を持っている人が多い」

--現代社会では政治的陰謀説、フェイクニュースの弊害が大きい。最近のテレビ討論でトランプ氏は「移民者が伴侶動物を取って食う」という発言をした。

「政治家は事実ではないと知りながらも、自身の政治的利益のためにうその主張を広める。トランプが先日10日の討論で『犯罪率が歴史上最悪』と話したが、実際の米国の犯罪率はコロナ禍当時少し増加して低くなる傾向だ。現政権を貶めるために、移民者に対する嫌悪を煽ろうとこのようなうその発言を繰り返すのは大きな問題だ」

シャーマー氏は陰謀説がはびこりにくい社会を作るためには「より多くの対話」が必要だと強調した。いくら敏感な主題でも、自身の意見を表出して「異なる考え」に接することが重要だということだ。あわせて「政治家は何か分からない時は分からないとどうか話してほしい」とも話した。政治家が陰謀説を広めて、結局それがうそであることが分かった場合、政治に対する不信はさらに深まり、社会はますます「信じられない場所」に変わっていくためだ。