中絶を受けられなかった米女性が死亡。ハリス氏「トランプ氏の行動のせいで女性たちが死んでいる」

AI要約

アメリカでロー対ウェイド判決が覆され、中絶手術を受けられなくなった女性たちが死亡している事実が明らかになっている。

ジョージア州で適切な治療を受けられず、少なくとも2人の女性が命を落とした事例が報告されている。

中絶の禁止が及ぼす影響と、女性たちの生殖権利を巡る深刻な問題について、さまざまな団体や政治家が声明を発表している。

中絶を受けられなかった米女性が死亡。ハリス氏「トランプ氏の行動のせいで女性たちが死んでいる」

連邦最高裁が2022年に「ロー対ウェイド判決」を覆したアメリカで、人工妊娠中絶を受けられなくなった女性たちが死亡している。

プロパブリカは9月16日、妊娠6週間目以降の中絶を禁止しているジョージア州で、適切な治療を受けられず少なくとも2人の女性が死亡したと報じた。

その1人であるアンバー・ニコル・サーマンさんは28歳だった2022年、すぐに中絶手術を受けられずに亡くなった。

サーマンさんは中絶薬を服用した後に合併症を引き起こし、病院に運ばれた。しかし、直前にジョージア州で中絶を厳しく取り締まる法律が施行されていたために、約20時間手術を受けることができず、最終的に死亡したという。

サーマンさんには6歳の子どもを育てるシングルピアレントで、看護学校への入学を予定していた。妊娠がわかった後、生活を安定させるために、産まない決定をしたという。

プロパブリカによると、サーマンさんの死亡について調査した委員会は、死を防げた可能性は十分にあると結論づけた。

この記事が掲載された後の9月17日、米大統領選挙の民主党候補カマラ・ハリス氏は「ジョージア州のこの若い母親は、今も生きて息子を育て、看護学校に通うという夢を追いかけているはずだった」と声明でコメントした。

「これこそ、私たちがロー対ウェイド判決が覆された時に恐れていたことです」

米最高裁は2022年6月に6対3で「ロー対ウェイド判決」を覆す決定をした。賛成した6人のうち3人は、米大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ氏が大統領時代に任命した保守派判事だった。

ハリス氏は「トランプ氏がもたらした中絶禁止により、20以上の州で医師が基本的な医療を提供できなくなっています」とも述べている。

「女性たちは駐車場で出血し、緊急治療室から追い返され、再び妊娠することができなくなっています。レイプや近親相姦のサバイバーが自分の体のことは自分で決められないと告げられています。そして今、女性たちが死んでいるのです。これらはドナルド・トランプ氏の行動がもたらした結果です」

ハリス氏は9月10日に開かれた大統領選挙のテレビ討論会でも、トランプ氏は「ロー対ウェイド判決」を覆すために保守派の最高裁判事3人を指名し、意図通りになったと批判している。

ハリス氏は17日の声明で「この選挙には多くの問題が争われています。それには私たちの奪われた自由を取り戻すことをも含まれています」と訴えた。

「ドナルド・トランプ氏は機会がめぐってくれば、全国的な中絶禁止令に署名するでしょう。そうなれば、こうした恐ろしい現実が増加します」

「私たちは、生殖の自由を取り戻す法案を可決する必要があります。もし私が大統領になれば、法案に署名します。その法律には命がかかっているです」

トランプ氏は最高裁がロー対ウェイド判決を覆したのは自分のおかげだと主張してきたが、大統領選挙を前にして極端な中絶反対の方針を修正しようとしている。

トランプ氏はテレビ討論会などで中絶禁止を含む保守派の政策提案「プロジェクト2025」とは関わりをもっていないと主張している。ほかにも、大統領選挙で当選しても、全国的な中絶禁止法の制定や、わいせつ物の輸送を禁じるコムストック法を中絶薬に適用する考えはないという方針を示している。

一方で10日のテレビ討論会で、トランプ氏は全米での中絶禁止法案に拒否権を行使するかどうかについては明言を避けた。

中絶手術を受けられない女性たちの死を伝えるプロパブリカの記事には大きな反響が広がっている。

社会的に弱い立場の女性の生殖の権利のために活動する団体「シスターソング」のモニカ・シンプソン氏は「これは、治療を必要とする黒人女性が、中絶禁止のアメリカで直面している現実です」と声明で述べた。

「妊産婦の死亡率は高い上、中絶禁止でより大きな影響を受けています。黒人女性はアメリカの歴史を通して、身体の自己決定権に対する攻撃に耐えてきました」

「私たちにとって、これは新しい闘いではありません。しかし今、私たちは身体の自己決定権を奪おうとする過激な政治家を打ち負かすために、これまで以上に闘わなければなりません。私たちをより自由な未来へと導いてくれると信頼できるのは、黒人女性です」