値上げか倒産か… 「1000円の壁」に直面するラーメン業界を米紙が取材

AI要約

日本のラーメン業界が1000円の壁を超える値上げのジレンマに直面している状況について取材した記事。コスト上昇による閉店の増加やインフレ、円安、エネルギー費の上昇などが背景にあり、日本経済の課題を浮き彫りにしている。

多くの店が値上げや閉店を迫られており、帝国データバンクによると2024年にラーメン店の倒産が過去最多になる見込み。材料費や人件費の上昇が原因で営業が厳しくなっている。

日本のラーメン文化は健在であり、繁盛する店も多いが、経済の広範な問題を反映している。賃金の上昇がインフレに追いつかず、生活水準が低下している状況が示唆されている。

値上げか倒産か… 「1000円の壁」に直面するラーメン業界を米紙が取材

ラーメン一杯は1000円を超えると客足が遠のくと言われている。だがインフレや円安、エネルギー費の高騰を背景に、多くの店がいま苦渋の決断を迫られている。そんな岐路に立つラーメン業界を米紙が取材すると、日本経済が抱える問題点が見えてきた。

手頃な価格で楽しめるラーメンは、日本の国民食とも言えるだろう。麺とたっぷりのスープからなる熱い一杯が、1000円を超えることはほとんどない。

仕事の昼休みにも、学校帰りのお腹を空かせた中高生にも、遅い電車で帰宅途中のサラリーマンにとっても、さっと食べられて頼りになる食事だ。

だが日本はいま、数十年に及んだデフレを経てインフレを経験しており、この安価な一杯にも影響が出ている。2024年、ラーメン店の閉店が過去最高のペースで進んでいるのは、店主たちがコスト上昇に対処するために「1000円の壁」を超える値上げをするか、さもなければ閉店するかというジレンマに直面しているからだ。

帝国データバンクによれば、2024年7月時点で49軒のラーメン店が倒産し、年間の閉店数としては過去最多を記録する見込み。材料費、人件費、電気代がこの3年間で10%上昇したことが判明している。

「物価は年々上がっていますが、とくにここ3年くらいの上昇は信じられないほどです。業界全体が苦しんでいます」と、東京西部にある「麺処一笑」の店主・金子哲也は語る。金子は昨年、普通のラーメン一杯の価格を50円値上げし、1000円に設定した。

もちろん、日本のラーメン文化に陰りが見えているわけではない。日本には2万1000軒以上のラーメン店があり、気温35度を超える蒸し暑い日でも、人気店の外には長い行列ができる。

にもかかわらず、今年閉店するラーメン店が増えたのは、日本におけるより広範な経済問題を反映している。インフレと円安、そしてエネルギー価格の上昇だ。

賃金は今年、過去30年で最速のペースで上がっているが、インフレに追いついておらず、多くの人々は生活水準が下がったように感じている。

「ラーメン店の例は、経済トレンドを見る良い指標になります」と、オックスフォード・エコノミクスの日本担当シニアエコノミストである山口範大は言う。

「彼らはコストの上昇を消費者に転嫁するという難しい課題に直面しています。2022年以前は、食品や家賃など、どんなものであれ価格上昇を嫌がる消費者が多かったですが、いまでは生活費の上昇を受け入れざるを得ない状況です」