イラン政府の「拷問」がもたらす「真の苦しさ」…可愛い双子と引き離され独房に監禁された女性が「見たもの」とは

AI要約

イランでは思想犯・政治犯として逮捕されると過酷な拷問が行われる実態がナルゲス・モハンマディによって告発される。

日本での刊行を目指した『白い拷問』は、自由への闘いを他人事にしないために必要な書籍である。

著者の独房体験を通して、子供を失う苦しみや過酷な尋問の様子が明らかにされていく。

イラン政府の「拷問」がもたらす「真の苦しさ」…可愛い双子と引き離され独房に監禁された女性が「見たもの」とは

イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。

上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。

世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行に先駆けて、内容を一部抜粋、紹介する。

『白い拷問』連載第3回

『あまりに過酷な環境に「人間かどうかも怪しくなる」…いまイランの刑務所で強制される「非人道的すぎる」独房生活』より続く

2010年の独房での経験は、私が母親になっていたので、2001年のときとは決定的に違っていた。子どもたちはまだ小さかった。ご飯を食べさせ、寝かしつけ、あやし、お風呂に入れ、お話を聞かせ、一緒に遊んでいた。それがいきなり、すべて奪われてしまった。もう自分が自分でなくなったようだった。こうなる前、アリとキアナが自分の腕からいなくなってしまうなどと、想像できただろうか、そんなことに耐えられただろうか。すべてを失ったに等しかった。手足をもがれたのと同じだった。

罪を告白し、改悛し、協力しないかぎり独房から出ることは叶わなかったので、尋問は苦痛だった。私は再び裁判所に呼び出された。今回は私の逮捕状を出したキアンマネシュ裁判官の法廷ではなく、モヘビ氏の法廷だった。モヘビ氏は法を悪用し、私が国家治安を乱す陰謀を唱えたという新たな罪を作り上げ、拘禁の理由とした。彼が逮捕状を出したのは、私が逮捕されてから何日もあとだった。起訴の根拠は一体何なのか、私は尋ねた。「なぜ最初の起訴内容と違うのですか?」と尋ねた。「なぜキアンマネシュ氏は初めからこの内容で起訴しなかったのですか?」と。