ウクライナ、計画停電が日常に 刻々と迫る厳冬期は状況悪化の懸念も

AI要約

ロシアがウクライナに対し過去最大規模の空爆を開始し、エネルギーインフラを攻撃。数百万人の電力が遮断され、計画停電が行われている。

ウクライナ政府がエネルギー不足に備えて対策を講じており、エネルギー網の守りを固めつつある。しかし、攻撃への対抗策には資金面の課題がある。

ロシアによるエネルギーインフラ攻撃はウクライナの経済に深刻な影響を与えており、国際社会から警戒されている。

ウクライナ、計画停電が日常に 刻々と迫る厳冬期は状況悪化の懸念も

キーウ(CNN) ロシアは26日、ウクライナに対し過去最大規模の空爆を開始し、全土のエネルギーインフラを攻撃した。空爆による混乱の規模は明らかにされていないが、数百万人の電力が遮断されたとみられる。

ウクライナの民間エネルギー最大手DTEKは同日、キーウ、オデーサ、ドニプロペトロフスク、ドネツクなど複数の州で計画停電を発表した。これにより、首都キーウ西郊では暗闇の6時間を過ごした後の午前2~4時の2時間、電気の使用が可能になる。

夏の時点で既に計画停電が必要であることは特段の懸念材料だ。数カ月後にやってくる厳冬期は電力需要が高まる傾向にあり、状況はさらに悪化する可能性がある。

「冬場を乗り切り、重要なインフラ、人々、経済にエネルギーを供給することが重要な課題だ」とウクライナのシュミハリ首相は27日、記者団に述べた。

ウクライナのエネルギーインフラは長い間、ロシアによる攻撃に見舞われてきた。

キーウでは、当局が発電機を備えた設備「不屈センター」を設置し、停電中にも電子機器の充電やインターネットの利用が可能だが、多くの市民はポータブル充電器を持ち歩いている。

エネルギーインフラへの頻繁な攻撃は、ウクライナの多くの都市が太陽光発電に投資するきっかけにもなった。キーウのクリチコ市長によれば、住宅協同組合やマンションが電力網から独立できるよう、市が発電機やソーラーパネルの購入に補助金を出しているという。

今では小さな屋台から巨大なショッピングモールまで、大半の企業が自家発電機を所有し、その大きな音は停電の代名詞となっている。

キーウ在住のバリスタ、マクシム・ホルブチェンコさん(25)は、発電機のおかげで停電が起きるたびにカフェを閉めなくて済むと話した。

26日のキーウは暑く、カフェの温度計は34度を示していた。発電機ではカフェの通常のサービスに必要な電力を十分に賄えず、エアコンとコーヒーマシンの一部を止めなければならないという。

ロシアは2022年2月の全面侵攻以来、ウクライナのエネルギー網を標的にしてきた。今年に入り、火力発電所、水力発電所、エネルギー貯蔵施設といった発電施設が特に狙われている。

戦争犯罪の捜査・訴追についてウクライナに助言を行う国際NGO「グローバル・ライツ・コンプライアンス」の法律専門家、オルハ・マツキフ氏によれば、これはロシア軍によるウクライナを人的および財政的に枯渇させ、経済の減速を狙った戦術だという。「電力不足で企業が閉鎖されれば経済は発展できない」と指摘している。

ウクライナ政府は、エネルギー網を攻撃から守るための強化対策に務めてきた。まずは破片から守るためにエネルギー網を覆い、次にある程度の直撃にも耐えられる鉄筋コンクリート製の防御壁を導入してきた。

シュミハリ首相は27日、これらの対策が功を奏していると述べた。その前日、ロシア軍がウクライナの変電所を攻撃し、数十発のミサイルが命中したが、防護対策によって被害はごくわずかな設備を失うだけにとどまったという。

ウクライナは現在、大型発電所を攻撃から守るため、サッカー場3つ分の巨大な防護構造物の実験を行っている。シュミハリ氏によれば、それらは極めて高額で、経済的な実現可能性は不透明だ。変電所6カ所の防護費用は1880億フリブナ(約6570億円)に上り、現段階で出資される見込みはないうえ、国家予算にも含まれていない状況だという。