脳に入り込む微小プラスチック片、8年前の1.5倍に 米研究

AI要約

今年の検視解剖で採取された人間の脳のサンプルに、8年前に採取されたサンプルの約1.5倍に上る微小なプラスチック片が含まれていたことが明らかになった。

プラスチックの濃度は脳組織において0.5%であり、プラスチックへの曝露を示すだけで、脳へのダメージについては何も言及していない。

さらなる研究が必要であり、プラスチック粒子と細胞の相互作用や毒物学的な影響について明らかにする必要がある。

脳に入り込む微小プラスチック片、8年前の1.5倍に 米研究

(CNN) 今年の検視解剖で採取された人間の脳のサンプルに、8年前に採取されたサンプルの約1.5倍に上る微小なプラスチック片が含まれていたことが、5月にインターネット上に投稿されたプレプリント(査読前論文)で明らかになった。プレプリントとは査読を経ておらず、学術誌に未掲載の研究を指す。

論文の筆頭著者を務めた米ニューメキシコ大学のマシュー・キャンペン指導教授(薬学)は、「45~50歳の通常の人の脳組織で確認されたプラスチックの濃度は1グラム当たり4800マイクログラムと、重量比で0.5%だった」と明らかにした。

キャンペン氏は「16年に検視解剖が行われた脳サンプルに比べ、約50%高い数字だ」と指摘。「これは私たちの現在の脳の99.5%が脳組織で、残りはプラスチックであることを意味する」と説明した。

ただ、米ラトガース大学のフィービー・ステイプルトン准教授(薬理学・毒物学)によると、この増分はプラスチックへの曝露(ばくろ)を示しているに過ぎず、脳へのダメージに関する情報を示すものではないという。ステイプルトン氏は今回のプレプリントに関与していない。

ステイプルトン氏はメールで「生体内ではこれらの粒子は流動的で脳に出入りしているのか、あるいは神経組織に蓄積されて病気を促進するのかは不明だ」と述べ、プラスチック粒子と細胞の相互作用や、毒物学的な影響の有無についてはさらなる研究が必要だとの見方を示した。

今回のプレプリントによると、脳のサンプルに含まれる微小なプラスチック片の量は、遺体の腎臓や肝臓に比べ7~30%多かったという。

米ボストンカレッジのフィリップ・J・ランドリガン教授(生物学)は、「研究の結果、人間の心臓や大血管、肺、肝臓、睾丸(こうがん)、消化管、胎盤からこうしたプラスチックが見つかっている」と指摘した。

「この分野の科学はまだ発展途上であり、人々を怖がらせないことが重要。2024年の今は誰一人としてプラスチックなしでは生きられない」とも語った。ランドリガン氏は今回のプレプリントに関与していない。

今回の調査のため、研究者は16年と24年に死因検証のため法医学解剖を受けた92人の脳や腎臓、肝臓の組織を調べた。脳組織のサンプルは思考や推論をつかさどり、前頭側頭型認知症(FTD)や後期アルツハイマー病の影響を最も大きく受ける前頭葉から採取された。

キャンペン氏は「我々の観察を基にすると、脳には100~200ナノメートル程度の微小なナノ構造体が入り、1~5マイクロメートルの比較的大きな粒子の一部は腎臓や肝臓に向かうと考えられる」と指摘した。

マイクロプラスチックとは5ミリメートル以下から1ナノメートルの断片のことを指す。米環境保護局(EPA)によると、人間の髪の毛は約8万ナノメートル。さらに小さいものはナノプラスチックに当たり、1メートルの数十億分の1の単位で測定される必要がある。

人間の脳は重量ベースで約6割を脂質が占める。オメガ3などの必須脂肪酸は脳細胞の強さとパフォーマンスにとって重要で、人体は自ら必須脂肪酸を生成できないため、食品かサプリメントから摂取する必要がある。ランドリガン氏によると、マイクロプラスチックやナノプラスチックにさらされる主なルートは食生活だという。