「タンポン・ティム」のあだ名をつけられた米副大統領候補が、「むしろ光栄だ」とニンマリしている理由

AI要約

トランプ支持者が民主党副大統領候補ティム・ワルツを「タンポン・ティム」と揶揄したことにより、両陣営の決定的な違いが浮き彫りになった。

「タンポン・ティム」のあだ名は、生理用品をめぐる議論から生まれたものであり、ミネソタ州の政策に端を発している。

共和党と民主党の対立があだ名に現れており、ワルツ知事のポリシーに対する異なる評価が示されている。

「タンポン・ティム」のあだ名をつけられた米副大統領候補が、「むしろ光栄だ」とニンマリしている理由

米大統領選の民主党副大統領候補ティム・ワルツのことを、トランプ陣営が「タンポン・ティム」と揶揄している。その呼称が浮き彫りにするトランプとハリス陣営の決定的な違いが、この選挙を左右するかもしれない。ジャーナリストの池畑修平氏が解説する。

同じ言葉でも、一方は嘲笑、一方は称賛と位置づける、珍しいケースといえよう。米大統領選挙で民主党のカマラ・ハリス候補が副大統領候補に選んだティム・ワルツ(ミネソタ州知事)に、共和党陣営がつけたあだ名だ。

“Tampon Tim”

「タンポン・ティム」

生理用品を名前の枕詞のようにつけたこのあだ名、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の支持者の間であっという間に拡散。右翼インフルエンサーとして知られるチャヤ・ライチクはタンポンの箱にワルツの顔を貼りつけた画像を投稿してみせた。

投稿に説明の文章は何もついていないのだが、ライチクの意図は疑いようもない。ワルツを小馬鹿にしたのだ。生理用品のパッケージで60歳の男性が微笑んでいるのは、たしかにギョッとさせられる。

ところが、ハリスや民主党を支持する人々からは、この「タンポン・ティム」は称賛の言葉として捉えるべきだという声が湧き上がっている。たとえば、2016年の大統領選でトランプに敗れたヒラリー・クリントン元国務長官は、「トランプ陣営がワルツ知事の思いやりと常識に基づく政策を広報してくれるのは良いことだ」と投稿している。

両陣営が正反対の評価をする理由は、まさに生理用品をめぐる議論からだ。

ミネソタ州は今年初めから4~12年生の生徒が通う公立学校のトイレに無料の生理用品を置きはじめた。昨年制定された州法に基づく措置で、いわゆる「生理の貧困」を解消するのが目的だ。

もともとは同州内の女子生徒たちが「急な生理などで授業を受けられなくなることがよくある」と問題提起し、州議会で議論が重ねられた。

米メディアによれば、こうした法律はすでに全米50州の過半数で制定されているので、ミネソタ州が特段に革新的というほどではない。

では、何ゆえに「タンポン・ティム」なのか?

それは、ミネソタ州議会で法案を審議していた過程で、共和党の議員が生理用品を置くのは「女子用」もしくは「女子用とジェンダーフリー用」と明記すべきだと主張したのに対し、法案を提出した民主党の議員らが反対したことがクローズアップされたためだ。

民主党側は、性的マイノリティの女子生徒は、女子用・ジェンダーフリー用・男子用のうち、どのトイレを利用するか自由に選べるようにすべきだと主張した。

最終的に共和党側が歩み寄り、法の文言で「どのトイレに生理用品を置くのか」は限定されなかった。これにトランプ支持者らは目をむいてワルツを攻撃しているというわけだ。「男子トイレに生理用品を置かせる法案に署名する知事なんて、これ以上にヘンで過激なことはあるか?」という論調一色となっている。

かくして「タンポン・ティム」となった。