ハリス氏は「試錐」、トランプ氏は「堕胎」が足引っ張るか…無償給食浮上の可能性も

AI要約

米国大統領選挙の激戦地域でハリス副大統領とトランプ前大統領が主導権を争い、無分別なばらまき式ポピュリズム公約が懸念される。

ハリス氏がラストベルトで水圧破砕法禁止を訴える中、トランプ氏はエネルギー費用削減を公約し、サンベルトでは堕胎問題が選挙構図を変化させている。

さらに米国大統領選挙で無償給食問題が焦点となり、ハリス陣営は支持する一方、トランプ氏は支持しないと予想されている。

11月の米国大統領選挙の2大激戦地域のうちハリス副大統領が追撃するラストベルトとトランプ前大統領がややリードしていると評価されるサンベルトで相手方が主導してきた政策課題のため大詰めで主導権の変化が起きるかもしれないとの観測が提起された。また、双方の主導権争いの中で国の財政状態を無視した無分別なばらまき式ポピュリズム公約が乱舞しているという懸念の声も大きくなっている。

◇4年前に「水圧破砕禁止」発言

ハリス氏が死活をかけているラストベルトの中心ペンシルベニアでは2020年の民主党大統領選挙党内選挙の際にハリス氏がシェールガスボーリング技術のひとつである水圧破砕法を禁止するという発言が出てきた。

当時ハリス氏は岩盤に液体を注入してガスを分離する水圧破砕法が大量の温室効果ガスを排出すると指摘した。問題はペンシルベニアが世界最大の天然ガス生産地のひとつで、多くの有権者がコストが低い水圧破砕法を支持している点だ。ハリス氏の副大統領候補でミネソタ州知事のワルツ氏は2040年までミにネソタの電力網を100%親環境エネルギーに変えると明らかにするなどハリス氏より強硬なエネルギー政策を行っている。

これに対しトランプ前大統領はバイデン政権の親環境エネルギー政策を強く批判し「就任初日にガスと原油をボーリングして米国のエネルギー費用を世界最低水準に下げる」と公約した状態だ。

ワシントン・ポストは13日、「ハリス陣営がペンシルベニアの有権者を意識して『水圧破砕法を禁止しない』という立場を明らかにしたが地域の不安感は大きくなっている。ハリス氏より中道性向でありペンシルベニア出身であるバイデン大統領も2020年に8万1000票という僅差で勝利したが、ハリス氏はペンシルベニアでバイデン氏よりさらに厳しい状況に直面しかねない」と予想した。

◇サンベルト、堕胎「賛否投票」変化の可能性

違法移民問題を前面に出してトランプ氏がリードしていると評価されるサンベルト地域の選挙構図は急激に堕胎に対する賛否を問う投票の様相に変化する兆しを見せている。

アリゾナ州はこの日大統領選挙の際に堕胎の権利を州憲法に明記するのかをめぐり住民投票をともに実施すると明らかにした。ミズーリ、コロラド、フロリダ、メリーランド、ネバタ、サウスダコタの6州が同様の決定をしたが、このうちネバタはジョージア、アリゾナとともにサンベルト内の代表的激戦州に選ばれる。サンベルト内2州の大統領選挙が事実上堕胎に対する賛否を問う投票形式で進められる可能性があるという意味だ。

堕胎問題は民主党内でもハリス氏が主導してきた。また、ニューヨーク・タイムズによると連邦最高裁が2022年に堕胎権を認めた判決を破棄してから堕胎権保護と関連した住民投票が実施された7州すべてで堕胎権を認める結果が出たほど堕胎権に賛成する女性有権者の気持ちが強い。2022年11月の中間選挙で民主党が予想を破る善戦をした背景もやはり堕胎問題と分析される。

◇米大統領選挙でも「無償給食」問題浮上か

ニューヨーク・タイムズはこの2つの問題のほかにもすべての公立学校で無料で食事を提供する普遍的無償給食が今回の大統領選挙で全国単位の争点になるだろうと予想する。無償給食はハリス氏のランニングメイトであるワルツ氏が昨年ミネソタで通過させた事案で、民主党をワルツ氏の決定を党レベルの主要成果として広報している。現在米国50州のうち無償給食を実施するのはミネソタ、コロラド、カリフォルニア、メーン、マサチューセッツ、ミシガン、ニューメキシコ、バーモントの8州だ。バーモントを除いた7州の州知事は民主党所属だ。

トランプ氏の場合、2020年のコロナ禍対応次元で一時的に無料給食を実施したことがある。この政策はバイデン政権となり2022年秋に終了した。

同紙は「ハリス陣営が無償給食を公約で提示する可能性が大きいのに対し、トランプ氏は無償給食を支持する可能性が低い」と予想する。実際に共和党が最近提示した予算案にはバイデン政権が推進してきた無償給食基準緩和案に反対しており、トランプ氏の国政運営ビジョンと評価される「プロジェクト2025」にも無償給食に対する批判的な内容が盛り込まれている。