憲法改正するという北朝鮮、最高人民会議の便りはなく…韓国の出方見守るか

AI要約

北朝鮮では、金正恩国務委員長が憲法改正を進めるように指示したにも関わらず、最高人民会議の開催が遅れている。憲法改正は「敵対的両国関係」などの重要事項も含まれており、負担の要因も考慮されている。

金正恩政権は、北朝鮮の憲法に韓国を「第1の敵対国」に位置付け、統一関連表現を削除する方針を示している。しかし、実際の憲法改正は遅れており、政治的負担や混乱を懸念する声もある。

北朝鮮が国境線や海上国境線の設定を検討している動きもあるが、具体的な行動に移るまでに時間がかかっている。最高人民会議の開催や金委員長の次期動向が注目されている。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が1月に韓国を「第1の敵対国」としながら憲法改正を進めるよう話してから半年が過ぎたが、「実際の行動」は遅れる雰囲気だ。北朝鮮で憲法改正は国会に当たる最高人民会議で行われるがまだ開催の知らせはない。「南側とあらゆることを断絶せよ」という言葉を投げかけた金委員長がこれを行動に移すのに時間がかかっている背景には政治的負担も作用していると分析される。

◇全員会議直後に開かれるようだったが…

北朝鮮の最高人民会議は通常国会に当たり、憲法と法律改正、主要国家機関人事、予算案承認などの機能を担当する。通常毎年4月に1回開かれたが、金正恩政権になってからは年2回開催と頻繁になった。2012年、2014年、2019年、2021年、2022年と昨年は上半期と下半期の2回開催されたが、昨年は1月と9月に開かれた。

今年は1月に開催され、韓国政府は当初早ければ7月に2回目の最高人民会議が開かれるだろうと予想した。6月末に党全員会議を開いた直後に最高人民会議を通じて後続措置に出るだろうという観測だった。

韓国統一部当局者は5月末に記者らと会い、「全員会議で憲法改正をはじめとする敵対的両国関係を議論し、最高人民会議後に外務省を通じて対南措置を発表する」と予想した。しかし全員会議は予告された通り6月28日から4日間開かれたが、その後最高人民会議は開かれていない。

何より金委員長が1月の最高人民会議を通じ「憲法に大韓民国を『第1の敵対国』『不変の主敵』と明記し、『北半部』『自主、平和統一、民族大団結』という表現を削除せよ」と命令してから憲法改正は事実上既定事実化した。先代の遺訓を否定し憲法から「統一」を消す一方、韓国憲法3条の「大韓民国の領土は韓半島とその附属島嶼とする」に相応する領土条項を新設する意志を表明したのに伴ったものだ。

金委員長は引き続き2月には「海上国境線」に初めて言及し、「われわれが認める海上国境線を敵が侵犯する時にはそれをわれわれの主権に対する侵害であり武力挑発と見なすだろう」と話した。金委員長の口から出た憲法改正事項だけで▽韓国主敵明記▽統一関連表現削除▽陸上・海上領土再規定――3種類だ。問題はタイミングだが、「実際の措置」はやや先送りされる雰囲気だ。

◇「遺訓否定」「国境線衝突」負担になるか

北朝鮮が憲法改正と関連して言葉が先行し行動は遅れていることに対し韓国政府は「金正恩政権に負担になることを懸念したもの」と判断している。経済難に水害まで重なった中で核武力を信じて先代の統一遺訓を消そうとする金委員長に対する内部の反発を懸念すると指摘される。統一部の金暎浩(キム・ヨンホ)長官も5月の記者懇談会で「金委員長が先代の業績を消し去ることが北朝鮮内部に理念的混乱を呼び起こす恐れがある」と話した。

また、北朝鮮が金委員長の主張通りに西海(黄海)北方限界線(NLL)以南に恣意的に「海上国境線」を引く場合、即時韓国側の侵犯を容認する形となり反撃に出なければならない軍事的負担を抱えることになる。NLLはこれまで実質的な南北間の海上軍事境界線の役割をしてきた。

ただ北朝鮮が国境線設定作業をある程度終えたような動向もとらえられ注目される。金委員長は先月中旬に江原道元山(カンウォンド・ウォンサン)の葛麻(カルマ)海岸観光地区建設現場を訪れ、「わが国は東西2面が海と接している」と話した。これは「3面を海と接している」というこれまでの北朝鮮の立場と異なる。

専門家らは北朝鮮が今月までに韓国の政治的・軍事的動向を調べた後、早ければ来月中に最高人民会議を開くと予想する。15日の光復節に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は自由民主主義価値に基づいた「統一談論」を発表する予定だが、これに対抗して金委員長もまた次期最高人民会議を通じて新たな国家観を憲法に組み入れる可能性がある。これに加えて韓米合同演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」が19日から29日まで実施されるだけに関連動向を注視した後で憲法改正の範囲と水準を調整するかもしれない。

また、6月のロシアのプーチン大統領の訪朝を契機に締結された朝ロ間の「包括的かつ戦略的パートナー関係条約」を憲法に反映するための事前作業に着手した可能性もある。統一研究院のホン・ミン上級研究員は「次期最高人民会議ではこれまで内部的に鼓吹した対南敵がい心をベースに憲法に新たな南北関係関連部分を反映して朝ロ条約と関連した内容も相当部分反映するものとみられる」と話した。