F16戦闘機供与はウクライナ軍の“航空劣勢”を打破するか? 小泉悠と砂川文次が「ロシアと戦争」を徹底討論

AI要約

東京大学准教授の小泉悠氏と元自衛官で芥川賞作家の砂川文次氏が、ウクライナに供与されたF16戦闘機の影響や砂川氏の新作小説『越境』について議論したオンライン番組が開催された。

小泉氏は、F16の供与数が不十分で決定打にはならないと指摘。一方で、オランダが使用を認めており、数が揃えばロシアの主要軍事基地を攻撃できる可能性もあると述べた。

砂川氏の小説では、新たな認知戦の形態が描かれており、フェイクニュースだけでなく客観的情報を組み合わせた認知戦のリスクについても警告されている。

F16戦闘機供与はウクライナ軍の“航空劣勢”を打破するか? 小泉悠と砂川文次が「ロシアと戦争」を徹底討論

 東京大学准教授の小泉悠氏と元自衛官で芥川賞作家の砂川文次氏が8月9日、「 文藝春秋 電子版 」のオンライン番組「 F16戦闘機到着で戦局は変わるか 」に出演した。2人の対談は2022年5月に行われた『ロシアを巡る「虚」と「実」』以来、およそ2年ぶり。

 8月4日、ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカ製のF16戦闘機が到着したとSNSに投稿。航空戦力の劣勢が続いていたウクライナ軍にとって失地回復の契機となるか、注目を集めている。

 今回の供与について、小泉氏は「現状では供与数が少なすぎるので、“決定打”にはならない」として、今まで通りのウクライナ軍による航空作戦が継続されることを意味すると指摘した。

 その一方で、「(F16の供与を表明している)オランダは、国境を超えて(ロシア国内での作戦に)使用してもいいと言っている」「ある程度の数のF16が供与できたら、ロシアの主要な軍事基地を攻撃できる可能性がある」として、小泉氏は今後の戦況が変化する可能性についても触れた。

 番組では、砂川氏の新作小説『越境』も話題に上がった。ロシア軍の侵攻から10年が過ぎた北海道東北部が舞台となる同作。なかでも、作品で描かれる「認知戦(≒情報戦)」について、警戒すべきは他国からの「フェイクニュース」だけではないと砂川氏は警鐘を鳴らした。

「(旧統一教会と政治家との関係のように)否定できない客観的情報を組み合わせた認知戦が今後出てくる。そうなると、ファクトチェックをすればするほど自国の首を締めていくようなジレンマに陥ることになる」

 そのほか番組の議論は、自衛官と警察官の“正義”に対する感覚の違い、日本人とロシア人の共通点など、多岐に渡った。

「 文藝春秋 電子版 」では、110分におよぶ オンライン番組「F16戦闘機到着で戦局は変わるか」のフル動画 を配信している。

https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h8484