「校内スマホ禁止」を憎んだニューヨークの高校生らに生じた劇的な変化 最初は「離脱症状」も見られたが…

AI要約

SNSが未成年のメンタルヘルスに及ぼす悪影響が懸念されるなか、米国の学校でのスマホ使用禁止の効果を探る調査結果。

携帯電話の禁止により、生徒の行動や成績に変化が現れ、学業や活動への集中力が向上。ニューヨーク市の全面禁止も検討中。

専門家も携帯電話の使用制限が子供たちにとって有効であると提言。携帯依存が引き起こす問題に対処する重要性が示唆されている。

「校内スマホ禁止」を憎んだニューヨークの高校生らに生じた劇的な変化 最初は「離脱症状」も見られたが…

SNSが未成年のメンタルヘルスに及ぼす悪影響が懸念されるなか、米国では校内でのスマートフォンの使用を禁止する学校もある。だがそうした禁止には効果があるのだろうか。ニューヨーク州で禁止措置を導入している高校を、米経済メディア「ブルームバーグ」が取材した。

離脱症状はすぐに表れはじめた。

携帯電話の使用を禁止した、米ニューヨーク州北部にある高校では、女子生徒が実在しないデバイスに絶えず手を伸ばしては、空(くう)をつかんでいた。廊下には、生徒らが鍵を壊してデバイスを取り戻そうとする音が鳴り響いていた。

ニューヨーク市のブロンクス区にある別の高校では、生徒らが抗議行動を画策した。

しかしやがて、そうした症状は消えていき、行動が変わった。

ブロンクスにある高校では、AP試験(高校在学中から大学の単位を取得できるための試験)のスコアが上がり、成績もコロナ禍前の平均に戻ったと校長のモニカ・サミュエルズは言う。校長によれば、携帯電話を禁止してくれたおかげで学業に集中しやすくなったと、こっそりお礼を言う生徒らもいたという。

同校では放課後にも変化が見られた。スポーツ行事やその他の活動への出席率が5割も増したのだ。

州北部にある高校では、生徒らが携帯電話の“脱獄”の手助けを諦めてから、授業態度が改善された。食堂は、はるかに騒々しくなった。生徒らがTikTok動画を見る代わりにカードゲームで遊ぶようになったからだ。

「教室で生徒たちに話すときも、しっかり聞いてくれるようになりました」と言うのは、同校で16年教える数学教師のケイト・シノットだ。それまで教室は、携帯電話に没頭してうつむく頭がずらりと並んでいたという。

この2校は、ニューヨーク市の生徒らに近々何が起こりうるのかを垣間見せてくれている。というのも、全米最大の学区であるニューヨーク市教育総監のデビッド・バンクスが、公立校1800校の生徒110万人超に対して、学校での携帯電話の全面禁止を予定していると発表したからだ。

ニューヨーク州知事のキャシー・ホウクルも、2025年度の州議会会期中に、学校での携帯電話の使用を州全体で禁止することを提案するつもりだと発言している。

米国中で目下、ソーシャルメディアに絶えずアクセスできてしまう携帯電話の潜在的な有害性をめぐって判断がなされている。公衆衛生局長官が警告を発し、カリフォルニア州ロサンゼルス市など米国中の学区で携帯電話の使用が禁じられている。

社会心理学者のジョナサン・ハイトによる『不安な世代』(未邦訳)は、テクノロジーがメンタルヘルスにどう影響するかを調査してベストセラーとなった。その研究チームのリーダーを務めたザック・ラウシュによれば、依存性のあるデバイスを子供らから引き離すのに最も有効な手段のひとつが、ニューヨーク市が計画するような使用禁止だという。

ニューヨーク大学経営大学院の研究員であるラウシュは言う。

「子供らは孤独感や孤立感を抱いています。学校の成績もよくない。どちらの問題とも、依存性のあるテックが学校に流入していることが大きな理由です」