ロボットはなぜ「悪者」扱いされるのか? 最新研究で明らかになった人間思考の偏り、高性能ほど責任が重くなるワケとは

AI要約

ロボットによる攻撃が一般的な兵器よりも民間人への非難を受けやすい研究結果が示された。

最新技術を取り入れた高性能な軍事ロボットがより大きな責任を負うと人々が考えていることが明らかになった。

自律型ロボットの普及が進む中、制御の難しい状況や倫理的問題について一層の議論が必要である。

ロボットはなぜ「悪者」扱いされるのか? 最新研究で明らかになった人間思考の偏り、高性能ほど責任が重くなるワケとは

 踏切で警報とともに降りてくる遮断機が運悪く人の頭や体に当たった場合、それは無謀な横断を試みた人の責任であり、遮断機に非はない。

 しかし、もしこの踏切で通行人の監督をしていたロボットが、無理やり踏切を渡ろうとした通行人を制止し、けがを負わせてしまったらどうだろうか。多くの人は、このロボットを責める気持ちになるのではないだろうか。

 自動運転車やその他の自律型ロボットが確実に社会に浸透しつつあることは疑いようがない。

・レストランで料理を運ぶロボット

・駅や大型商業施設で掃除をするロボット

などを、私たちは今後ますます目にするようになるだろう。

 これらが日常生活に浸透していく一方で、軍事分野においてもドローンやロボットが活躍する時代を迎えつつある。紛争地域の現状を見てもそれは明らかだ。

 軍事衝突における最大の懸念事項のひとつは、民間人への被害である。砲撃などの一般的な兵器による被害と、ドローンなどのロボットによる攻撃による被害では、

「深刻さ」

に違いがあるのだろうか。興味深いことに、新しい研究では、ロボットは単純なマシンよりも

「悪者にされやすい」

という結果が出ているのだ。

 2023年12月に『Journal of Experimental Social Psychology』誌で発表された、英国のエセックス大学とバース大学の合同研究チームによる研究では、高性能な軍事ロボットは通常の兵器よりも民間人の死に対する非難を受けやすいことが示されている。

 400人以上が参加した実験のひとつでは、武装したヒト型(ヒューマノイド)兵士ロボットがテロリストの拠点襲撃作戦に使用されるというシナリオが提示された。兵士ロボットには2種類あり、

・旧式で比較的単純なロボット

・最新技術を多く取り入れた新型で高性能なロボット

で、それぞれ機関銃(サブマシンガン)を装備し、単独で作戦を遂行した。

 テロリストの施設への襲撃の結果は両者とも同じだった。襲撃後、施設内には2人のテロリストの死体と、人質と思われる銃撃で負傷した10代の少女が発見された。少女は救急車で病院に搬送されたが、残念ながら後に死亡が確認された。

 参加者はそれぞれのシナリオにおけるロボットの責任を評価したが、最終的な結果は同じであったにもかかわらず、より高度なロボットをより強く非難する傾向が顕著にみられた。これは、ロボットが

「自律的で高度であればあるほど、より大きな責任を負う」

と人々が考えていることを示している。