驚きの連続の選挙【寄稿】

AI要約

フランスやイラン、そして米国の政治における驚くべき出来事が続いている。フランスでは極右が1位から3位に急落し、イランでは改革主義者が大統領に選出された。さらに米国ではジョー・バイデン大統領が退任し、カマラ・ハリス副大統領が後任に就いた。

ハリス副大統領は検事や上院議員の経歴を持ち、トランプ前大統領との対立にも備えている。内気なイメージを払拭し、積極的な行動を見せている。また、気候正義や再分配政策への取り組みが注目されている。

ハリス副大統領は中国政策においてもバイデン政権と同様の姿勢を取る一方、女性の権利や人種的な正義に重点を置く。バイデン政権の政策を継承しながらも、若く進歩的な姿勢を打ち出している。

驚きの連続の選挙【寄稿】

 冷笑的な人たちや陰謀論者は、すべてのことは舞台裏で決められると信じている。そのような人たちは、おかしくなって孤立した人による行動に見えることでさえ、実は陰謀を企てる組織の仕業だと考える。彼らにとっては驚くべきことは何もない。しかしこの数週間で、フランスをはじめとし選挙に関する非常に驚くべきことが3件発生した。

 フランスでは、欧州議会選挙で極右の国民連合がほぼ3分の1の票を獲得し、1位になった。国民連合は、エマニュエル・マクロン大統領が欧州議会選挙の結果に反応して議会を解散し、早期に実施した総選挙の第1回投票でも1位になった。しかし本当に驚くべきことは、決選では左派と自由主義者が協力し、極右が3位に落ちたということだ。

 2つ目に驚くべきニュースは、イランで改革主義者が大統領に当選したことだ。マスード・ペゼシュキアン新大統領は西側との核交渉の再開を公約し、社会問題においても寛容だ。

 最も衝撃的なことは、米国のジョー・バイデン大統領が大統領選挙から撤退したことだ。カマラ・ハリス副大統領がすぐにその後を継いだ。副大統領としてハリス副大統領がやったことは多くない。ハリス副大統領は、移民問題の根本的な原因を解決する役割を与えられ、中米諸国を訪問した。昨年12月にピークに達した無断越境者の数は減ったが、努力に比べて特に良い成果を示すことはできなかった。また、ハリス副大統領は、投票権や妊娠中絶を擁護する役割を果たしたが、重要な成果を上げることはできなかった。

 ハリス副大統領は内気なタイプではない。かつては非常に有能な検事だった。ジョー・バイデン大統領の陰に隠れることは、ハリス副大統領には似合わなかった。すでにハリス副大統領は、萎縮していた筋肉をほぐしはじめている。潜在的な大統領候補になった初日、民主党の主要な関係者らの支持を得るために、10時間で100人に電話をかけた。注目を集める演説を行い、9月に予定されるドナルド・トランプ前大統領との討論での正面対決の準備を進めている。検事や上院議員の経歴を考えると、ハリス副大統領はトランプ前大統領とのどんな論争でも手強い相手となるだろう。

 ハリス副大統領はバイデン政権の記録を持って戦うことが避けられない。ハリス副大統領は経済を化石燃料時代から脱却させるインフレ抑制法(IRA)などの政策の施行を続けると約束した。また、気候正義と再分配政策については、バイデン大統領以上に一貫した支持者だ。

 また、対外政策の分野ではいくつかの挑戦に直面している。ハリス副大統領はガザ地区の戦争を進めるイスラエル政府に対しては、バイデン大統領よりも批判的だ。これは若年層の信頼を回復するうえで多少なりとも役に立つだろう。ハリス副大統領はワシントンを訪問したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に会った直後、ガザ地区の苦しみについて「沈黙しない」と述べた。

 ハリス副大統領とバイデン大統領は、中国に対する関税賦課についてトランプ前大統領を批判した。その後、2人は立場を変えて、追加の関税賦課を支持した。ハリス副大統領は上院議員だったとき、香港、新疆ウイグル、台湾問題をめぐり中国を厳しく批判した。ハリス副大統領は、結果的には米中対立を緩和するためにも同じ努力をするだろう。

 ハリスが政権を取った場合、バイデン政権と大きな違いはないだろう。ただし、雰囲気と強調点は多少異なる。ハリス副大統領は女性の権利と人種的な正義を中心に据えてきた。バイデン大統領よりも民主主義と人権にさらに焦点を当てるだろう。しかしハリス副大統領は、多くの有能な検事と同様に、必要であれば取引をする実用主義者だ。ハリス副大統領は若く、鋭敏で、もう少し進歩的であるためバイデン大統領とは明らかに異なるが、バイデン政権が始めたことを忠実に進めるだろう。

 先月とは違い、米国大統領選は驚くべきことにあふれている。陰謀論者や冷笑主義者などの無視とは異なり、人々は投票という簡単な行為で歴史を変えることができる。投票だけが民主主義のための活動ではない。投票が最も重要な政治事案でもない。しかし投票は、全体的にみれば今でも驚くほど強力だ。

ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )