世界が驚いた改革派イラン大統領の誕生 なお高い経済制裁解除へのハードル 斉藤貢

AI要約

イラン大統領選で改革派のペゼシュキアン氏が予想外の勝利を収める。

決選投票の投票率は49.8%で、ペゼシュキアン氏が得票率53.6%を獲得。

イランの民主主義の健全さを証明し、40年ぶりに改革派の大統領が誕生した。

世界が驚いた改革派イラン大統領の誕生 なお高い経済制裁解除へのハードル 斉藤貢

 改革派のペゼシュキアン氏が当選する予想外の結果となったイラン大統領選。イスラム革命体制への国民の不満とともに、中東の民主主義が健全に機能していることも示した。

◇決選投票の投票率は49.8%

 ライシ前大統領の事故死を受け、決選投票まで進んだイラン大統領選挙では、改革派のペゼシュキアン氏が勝利し、大きな驚きを持って受け止められている。6月28日実施の1回目の投票では、過半数を得た候補者がおらず、得票率1位だった同氏と次点だった保守派のジャリリ氏との間で7月5日に決選投票が行われた。当初、ペゼシュキアン氏の躍進は見込まれてすらいなかった。

 そもそも、イランにおける大統領選と国会議員選挙では、立候補希望者はまず護憲評議会の資格審査をパスしなければならない。この会のメンバーは最高指導者が何らかの形で任命しているため、最高指導者が選挙結果を強くコントロールすることが可能だ。イラン・イスラム革命(1979年)から40年以上たち国民の体制離れが進む中、2020年の国会議員選挙以降、保守派は制度を使って露骨に資格審査で穏健派、改革派を排除し、保守派が圧勝している。

 一方、候補者を選ぶ自由を奪われたイラン国民は、投票をボイコットすることで不満の意を示してきた。イランでは投票率が革命体制に対する支持率と見なされており、過去には60%以上の投票率だったものの、20年以降は低迷していた。

 今回の1回目の投票率も過去最低の39.9%だったが、ペゼシュキアン氏が決選投票に残ったことから、多くの国民がいちるの希望を持って投票に参加し、投票率は49.8%に上昇した。その結果、ペゼシュキアン氏は得票率で53.6%を獲得し、ロウハニ大統領(在任13~21年)の当選以来、19年ぶりに改革派の大統領が誕生した。

◇イランの民主主義の健全さを証明

 イスラム法学者による統治を掲げたイスラム革命体制下の大統領選では、ラリジャニ元国会議長のような保守派でない有力候補は軒並み資格審査で落とされ、立候補を認められた5人のうち、保守派以外は無名のペゼシュキアン氏ただ1人。同氏が非保守派でただ1人残れたのは投票率を上げるためといわれ、保守派の勝利は「約束されたもの」と思われていた。