「“バイデンおろし”は違法」共和党が提訴? ハリス氏立候補の“正当性”に疑問投げかけ選挙戦に影響与える狙いか

AI要約

バイデン大統領が選挙からの撤退を表明し、共和党が違法だとして訴訟を起こす様子が描かれている。

Xのメッセージや英国の記事を通じて、退陣についての懸念や共和党内での認識が明らかにされている。

ヘリテージ財団の監視プロジェクトや共和党の対応策、選挙法の専門家の分析を通じて、状況が解説されている。

「“バイデンおろし”は違法」共和党が提訴? ハリス氏立候補の“正当性”に疑問投げかけ選挙戦に影響与える狙いか

バイデン大統領は声明文に続いて7月24日(日本時間7月25日)、大統領選挙からの撤退を改めて表明し、民主党の候補者交代劇は順調に進んでいるように思わせるが、共和党側はこの交代劇が違法だとして訴訟を起こすことになりそうだ。

18日、X(旧ツイッター)に保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団の監視(oversight)プロジェクト」の名前で次のようなメッセージが提示された。

「我々は過去数カ月、この瞬間に対応するために準備してきた。マスコミの多くは我々の信用を失墜させようとしてきた。最後に笑うのは誰だ?もはや“都合の良いように仕組まれた”選挙はなくなるのだ。乞うご期待…」

実は、英国の大衆紙デイリー・メール電子版に2024年6月21日、「もしバイデンが悲惨なテレビ討論会を行ったり、身を引くことになっても、保守派は2024年の投票用紙にバイデンの名前を残す術を考えている」という見出しの記事が掲載されていた。

記事は、ヘリテージ財団の監視プロジェクトが対応を準備していると報じ、プロジェクトのマイク・ハウエル委員長の次のような談話を伝えていた。

「我々は、バイデン大統領に今すぐ、あるいは選挙前に退くよう求める(民主党支持者の)全国からの声に注目しており、代理や撤退の手続きは非常に複雑であるとの結論に達した。我々は、適切な選挙保全手続きが踏まれるよう警戒を怠らない」

つまり、バイデン大統領が違法な手段で退陣に追い込まれたりしないか、その場合、各州で異なる選挙制度にどう対応できるか調査してきたというのだ。その結果、「今回のバイデン大統領の退陣は違法で、いよいよ監視プロジェクトの出番だ」というのがXのメッセージだったのだ。

共和党内では、これは民主党内の「クーデター」の結果だという認識で共通している。

「ジョージ・ソロス(民主党支持の投資家)、バラク・オバマ、そして民主党のエリートたちが煙のこもった部屋に集まり、ジョー・バイデンを海に投げ捨てることに決めた。それは民主主義に対する脅威であり、共和党はそんなことはしない」

共和党の副大統領候補に選ばれたJ.D.バンス上院議員は22日、オハイオ州での集会でこう語った。大統領の交代は選挙か憲法修正25条(大統領が病気などで執務できない場合、副大統領と閣僚の半数の了解とその後の議会の承認で交代できる)に限るとされており、今回バイデン大統領が党内外の退陣を求める声に押され、資金までたたれて退陣に至ったのは「クーデター」に他ならないというのだ。

共和党のマイク・ジョンソン議長は21日、共和党はバイデン大統領の退陣をめぐって数多くの訴訟を起こすだろうと明言した。

ヘリテージ財団の監視プロジェクトは、大統領選の決戦場となるウィスコンシン、ネバダ、ジョージアの3州に絞って対応する方針だと言われる。ウィスコンシン州では候補者が死亡した場合を除き交代を認めていない。ネバダ州は選挙年の6月の第4金曜日午後5時までに届がない限り交代を認めない。ジョージア州は投票日60日前まで候補者の交代は認められるので、各州の選挙法の間隙を縫って訴訟を起こしてゆくようだ。

これで現実にバイデンーハリスの交代劇が危ぶまれる事態になることはまずないだろうと米国の選挙法の専門家は分析しているが、それよりもハリス副大統領の立候補の正当性に疑問を投げかけることで選挙戦に影響を与えることが大きいと言われ、この問題がかしましく論議されることになりそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

【表紙デザイン:さいとうひさし