日本はもはや「イノベーションの国」ではなく、AIの「巨大市場」なのだろうか

AI要約

日本に大手テクノロジー企業が多額の投資を行っているが、その理由は単純に技術先進国だからではなく、他の要因もあるようだ。

日本はAIの中心地とは言えないが、AI業界で重要な役割を果たしており、自然言語処理などで先進的な取り組みを行っている。

特にAIデータの利用に関する規定が他国よりも柔軟であることが、日本のAI業界の発展に影響を与えている。

日本はもはや「イノベーションの国」ではなく、AIの「巨大市場」なのだろうか

オラクル、オープンAI、アマゾン、マイクロソフトなどが、日本に莫大な額を投資している。その理由は、「日本が技術的に最先端を行っているから」というわけではないようだ。

日本は人工知能(AI)の中心地なのだろうか。

2024年4月、米IT企業大手「オラクル」が、クラウド・コンピューティングとAIに関するサービスの拡充のため、80億ドル(約1兆2500億円)を日本に投資すると発表した。その直前には、生成AIサービス「ChatGPT」の生みの親である「オープンAI」が、アジア最初のオフィスを東京に開設すると決め、さらにその2ヵ月前には、大規模言語モデル「Llama」を作った「メタ」社のCEO、マーク・ザッカーバーグの来日が大々的に報道されていた。

これと並行して、他にも大手テクノロジー企業が日本のITインフラに天文学的な額の投資を発表し、生成AIを用いたサービスを展開しようとしている。

アマゾンのクラウド部門を担う「アマゾン ウェブ サービス」は、日本に2兆2600億円を投じようとしている。いっぽうマイクロソフトは、日本のデータセンターに4400億円を投資すると発表した。

同時に、日本政府も1兆円以上の助成金を出して、台湾企業による半導体工場の建設を支援し、日本の半導体企業「ラピダス」の創設にも莫大な額の出資をおこなっている。

だが、これらの事実は、日本を「AIの牽引役」と呼ぶ根拠に足るのだろうか。いずれにせよ、日本が重要な役割を担っていることは間違いない。日本のメッセージアプリ「LINE」と、韓国にあるその親会社「ネイバー」は、既に2017年、「クローバ」という見事な個人用AIアシスタントを開発し、AI業界において輝かしいデビューを飾っていた。

それに、歴史的に言って、日本はAIに必要不可欠である「自然言語処理(NLP)」の先進国である。日本企業「NEC」は、この業界のエンジニアから賞賛を浴びるような大規模言語モデル(LLM)を開発している。

とりわけ日本がこの業界の評価を得たのは、2023年6月に当時の文部科学大臣が、ChatGPTのようなチャットボットの開発・学習に使う目的で収集されるデータは、著作権を問わず利用可能だと宣言して以来のことである。

「この発表は業界を驚かせました。私の知る限り、このような発表をした国は日本が初めてです」。東京に拠点を置く中国系米国人の投資家で、「AbleGPT」の創設者である白強(バイ・チアン)はそう語る。

欧米の情報提供事業者はこれとは反対に、著作権で保護されたデータの使用に対価を支払わせるための戦いに向け、虎視眈々と準備していて(先陣を切った米「ニューヨーク・タイムズ」がすでにオープンAIを提訴している)、この技術に支えられているサービスには、法的なリスクが迫っていることを感じさせている。