浅草の老舗から82歳の鮨匠まで─英紙が選ぶ「女性すし職人」東京3名店

AI要約

東京の女性すし職人に注目が集まる中、鮨 めい乃の店主幸後綿衣が独自のスタイルで至極のすしを提供している。

女性の職人が増えつつある中、未だに女性すし職人は少なく、社会の偏見や肉体労働のハードルが存在する。

日本の伝統的なすしを味わいながら、女性すし職人が腕を振るう店が注目されている。

浅草の老舗から82歳の鮨匠まで─英紙が選ぶ「女性すし職人」東京3名店

英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が、日本ではまだ少ない女性すし職人に注目。国内外で高額なおまかせコースが人気を博すなか、独自のスタイルで至極のすしを提供する東京の名店を紹介している。

2024年初頭、東京の高級住宅街・麻布十番にある「鮨 めい乃」が、日本の人気ドキュメンタリー番組に取り上げられた。店主の幸後綿衣(こうご・めい)は34歳のすし職人かつソムリエで、10年の修行を経て独立し、自身の店をオープンした。

店を持とうと決意したときのことを、独立するには最適のタイミングだと思ったと幸後は語っている。この店で提供されるのは、5万円の「おまかせコース」のみだ。

銀座の小野二郎に金沢郊外に店を構える山口尚享(たかよし)と、名立たるすし職人がそろう日本で幸後が注目を浴びる理由はシンプルだ。彼女がすしを極めたいと願う、女性の職人だからだろう。

すし業界は伝統的に男社会だ。2021年の政府統計によれば、すし店主約1万人のうち女性はわずか5.5%だった。

日本社会における偏見も根強く、女性は手が温かすぎるため、すしを握るのには向いていないという迷信が信じられていた時代もあった。カウンターも男性が仕事をしやすい高さに設えてあるため、女性の職人は身長が合わず不便を強いられることが多い。

だが女性がすし職人になりにくいのは、偏見のせいだけではない。代々木上原にある「鮨武」の店主・毛利武司(57)によれば、すし職人には調理以外にもたくさんの仕事があり、体力的にきついという。見習いは、店内清掃から大きなまな板の洗浄、シャリの用意まで、すしを握るためのあらゆる準備を任される。

さらにすし職人の一日は、まず早朝に魚市場に出向き、仕入れをすることから始まる。その際には、よい魚を見分ける能力だけでなく、魚と氷で20キロほどの重さになったクーラーボックスを運ぶ体力も必要だ。毛利は言う。

「外食産業は人手不足なので、女性のすし職人がもっといてくれるといいと思うのですが、数が増えているかというと、そうでもないんです。偏見もあるし、きつい肉体労働でもある。その両方がハードルを上げているのでしょう」

東京で女性のすし職人が営む店を見つけるのはいまもかなり難しいが、訪れるべき店がいくつかある。そこでは日本の伝統的なすしを味わえるだけでなく、「ガラスの天井」を打ち破り、素晴らしいすしを握る技を持つ女性たちにも会える。