「理想が高くて結婚できない」のではない…40歳未満の東大卒女性の2人に1人が未婚である本当の理由

AI要約

日本における女子の大学進学率が低い理由には、社会に残るジェンダーギャップが大きく影響していることが挙げられる。

女性は大学進学後の報酬や結婚の機会が男性と比べて少ないという社会的期待が、大学進学への投資意欲に影響している可能性がある。

東京大学の女子学生比率が30年間ほとんど変わらないことから、ジェンダーギャップが依然として存在し、社会の女性活躍の度合いに関わる問題があることが示唆されている。

日本は欧米に比べて女子の大学進学率が著しく低い。なぜなのか。経済学者の安田洋祐さんは「本人の能力にかかわらず、社会に残るジェンダーギャップが大きく影響している。東京大学を卒業した女性は男性に比べて結婚しづらいのも同じ理由によるものだ」という――。

 ※本稿は、西田亮介、安田洋祐『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■欧米では女子のほうが大学進学率が高い

 ぼくが大学に関する国際的な比較で衝撃を受けたのが、大学生の男女比です。

 これを見てみるとOECD諸国のなかで男性のほうが多いのは日本ぐらいなんです。

 北米とかヨーロッパはもう軒並み女子のほうが進学比率が高いんですよね。

 日本にいるとわかりやすく地方格差と男女格差があって、47都道府県のうち、女子が男子の大学進学率を上回っているのは徳島県(女子52.6%)と高知県(同49.1%)、鳥取県(同43.4%)です(文科省「2022年度学校基本調査」による)。ほかはすべて男子のほうが進学率は高くなっています。

 伝統的に、女性が大学を出てキャリアを築いても期待できるリターンが少ないのであまり熱心に大学に行こうとしないという深刻な構造問題があるのと、あとは女性には短期大学という選択肢があるから、という点が大きいのではないでしょうか。

■東大の女子学生比率は約30年ほぼ変わっていない

 ところが、「○○女子短大」は最近はどんどんなくなったり、4年制大学に移ったりしています。それによって、ある程度はギャップが縮まっていくとは思われます。

 なので、日本に固有とまではいえないかもしれませんが、女性だけもっぱら2年制の大学に行っていたというのが、ほかの先進諸国との違いを生み出している大きな要因かもしれません。

 しかし、一番大きいのはやはり、大学を出たあとの年収であったり結婚の機会であったり、リターンの期待値(期待リターン)が男女間でだいぶ違うところでしょう。実際に、たとえば東京大学の女子学生比率はいまだにすごく低い状況です。20%ぐらいで、ぼくが学生の頃からほとんど改善していません。

 これって結局「炭鉱のカナリア」みたいな形で、どのくらい女性の社会活躍が真に進んでいるかを見る、とてもすぐれた物差しではないでしょうか。

 なぜかというと、中学や高校の段階では男女間での基礎学力にほとんど差はありません。むしろ女性のほうが優秀だったりするわけです。

 にもかかわらず、大学入試を経て、東大などの難関大に入学する学生のジェンダーギャップがこれだけあるのは能力の問題ではなくて、どれぐらい時間やコストを大学進学に投資するか、という投資インセンティブの違いが如実に出ているからです。

■周囲の大人のジェンダー観が影響を及ぼしている

 何がその投資量の違いを生むかというと、大学を出たあとの期待リターンや、家族や教員などまわりの大人たちからの影響ですよね、普通に考えると。

 ご家庭、親御さんが子どもの進学についてどう考えるか、ジェンダーによる価値観の違いのようなものが現れています。

 本人の能力とは関係なく、社会の女性活躍の度合いと周りが期待するジェンダー観みたいなものが影響しているからこそ、本人の投資行動が変わってくるわけです。

 それを測るのに、やはり東大の女子学生の比率は優れた代理変数ではないでしょうか。

 この数字が改善してないということは、表面上就労率が上がったり、女性でも中間管理職以上に進む人がある程度増えていたりしても、やっぱりいまだに水面下ではジェンダーギャップが残っているということです。足元で、優秀な女子高校生たちの行動が変わっていないわけですからね。

----------

【西田】

期待リターンと親などの制約条件のどちらが効いているかも興味深いです。東大を出てからの行き先はほかの場合と比べてジェンダーギャップがかなり少ないはずなので、期待リターンは男性も女性も変わらないのでは? だとすると期待リターンの違いよりも、社会のジェンダーを巡るさまざまな偏見、差別意識、規範感情などが関係している気もします。

----------