対北制裁、形骸化恐れ 総連幹部訪朝、思想教育を徹底か

AI要約

日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の局長級幹部が北朝鮮に渡航した初めての事例が明らかになった。

日本政府の北朝鮮に対する独自制裁の実効性が問われる中、新型コロナウイルス禍による制限緩和や国際社会の対応に注目が集まっている。

北朝鮮が国境封鎖により経済的困難に直面し、人的往来の制限を部分的に解除している状況で、朝鮮総連幹部の訪朝は資金調達や指導理念の強化を意味していると見られる。

対北制裁、形骸化恐れ 総連幹部訪朝、思想教育を徹底か

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の局長級幹部が新型コロナウイルス禍以降初めて北朝鮮に渡航したことが24日、明らかになった。2020(令和2)年1月以降、国外との人的交流を制限していた北朝鮮との交流が活発化する可能性もある。日本政府独自の制裁の実効性が形骸化される恐れもあり、関係者は動向を注視している。

日本政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験実施を受け、06(平成18)年7月から独自の制裁を行ってきた。14(同26)年7月には北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査を開始したのを受け、人的往来の規制などを一部解除した。

ただ、その後も核実験と事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、日本政府は16(同28)年に制裁を強化。送金の原則禁止や北朝鮮籍船舶だけでなく北朝鮮に寄港した第三国船舶の入港も禁じるなど「ヒト・モノ・カネ」の面で強い措置を打ち出した。

朝鮮総連幹部の再入国禁止の対象者を拡大したほか、新たに北朝鮮へ渡航した在日外国人の核・ミサイル技術者の再入国を禁止した。

制裁が続く中で、新型コロナウイルスの感染拡大により、北朝鮮は20(令和2)年1月末に国境を封鎖し、住民の国内移動や入国を厳しく制限。国際社会による制裁や国境封鎖に伴い、国内の経済の疲弊や食糧不足は深刻な状況に陥り、国民は飢えに苦しんでいるという。

朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定締結から70年を迎えた23(同5)年7月に平壌で開催した記念式典に中国とロシアの高官が出席したのを皮切りに、海外滞在中の自国民の帰国を承認するなど、人的往来の制限を部分的に解除。中国やロシアとの往来を徐々に本格化させている。

長期にわたる国境封鎖の影響で、北朝鮮は、朝鮮総連への影響力低下も懸念しており、今回の朝鮮総連幹部訪朝で改めて資金調達や体制を支える指導理念「主体思想」などの徹底を指示するものとみられる。(大渡美咲)