人々を長生きさせる「都市の特徴」とは? スペインに学ぶ「短期的・長期的幸福を育む都市計画」

AI要約

2050年の国別寿命予測によると、南欧の国々が上位にランクインしている。スペインでは長寿を支える施設や食生活の習慣が注目されている。

豊かさと健康の関係性を超える予測結果が示され、地中海食や過去の食習慣が長寿に影響している可能性がある。

長寿地域における研究や専門家の意見から、健康に良い食事や生活習慣が長寿を促す要因であることが示されている。

人々を長生きさせる「都市の特徴」とは? スペインに学ぶ「短期的・長期的幸福を育む都市計画」

米ワシントン大学が発表した2050年の国別寿命予測では、必ずしも豊かとはいえない南欧の国々が多数上位に食い込んだ。英誌「エコノミスト」は、なかでも現在の世界最高齢者を擁するスペインに注目。スペインの都市には、「いまの楽しさ」と「長期的な満足度」を両立させる要素があるという。

マドリード中心部のホルダン通りという短い街路は、人の一生の初めから終わりまでをカバーしている。

一角を占めているのが不妊治療クリニックだ。出生数が少ない国では目にする機会が増え、次第にありふれた存在になってきている。その1ブロック先にあるのは、年金生活者向けのデイサービス施設。記憶力トレーニングや歩行補助などのサービスを掲げている。60代の女性が90代の母親を連れて、この施設の玄関口にゆっくりと向かう姿もよく見かけるようになった。

ワシントン大学保健指標評価研究所は最近、2050年の国別寿命予測を発表した。長寿の上位20ヵ国には、スイスやシンガポールなど、一人当たりGDPがトップレベルの国々がランクインしている。韓国や日本といった東アジア勢も上位に食い込んだ。

だが、地理的にまとまった、一人あたりGDPがそれほど高くない国々、すなわちスペイン、イタリア、フランス、ポルトガルも長寿国に名を連ねる。近隣の3つの小国、サンマリノ共和国、マルタ共和国、アンドラ公国も20位内だ。現時点の世界最高齢者は、マリア・ブラニャス・モレラ(117)というスペイン人女性であり、彼女の前はフランス人女性だった。

健康・長寿と一人当たりGDPが相関関係にあるのは、意外なことではない。ところが、この2050年の予測平均寿命において、スペイン(85.5歳)はデンマーク(83.5歳)よりも上位なのだ。豊かさと健康のお決まりの関係性を上回る予測結果が南欧諸国にもたらされたのは、なぜなのだろうか。

多くの人が、それは「地中海食」、つまり魚、全粒粉、果物、野菜、オリーブオイルを中心とした食事のおかげだと言う。だが批評家によれば、ポルトガルからギリシャにいたるまで、その食生活は大きく異なるという。しかも、現在この地域に住む人々が「地中海食」にこだわっていないことも、研究から判明している。

スペインの広場は、「まだ早すぎる」と思う人がいるような時刻でも、揚げた魚と塩漬けのハムをビールで流し込む人々でいっぱいだ。スペイン人のアルコール摂取量はヨーロッパの平均以上、喫煙量も平均を若干上回っており、コカインにいたっては使用者数がヨーロッパ最多である。

長寿地域に関する著書が複数あるダン・ビュイトナーによれば、なぜ人が老いるのかを理解するためには、現在の習慣ではなく、50年前の習慣に注目しなければならないという。

当時は主に穀物や豆、じゃがいもから成る「農家食」が一般的だった。サルデーニャ島の「ブルーゾーン」、つまり100歳以上の人が多い地域についての最近の研究で、当時のこの地の食生活には、どんぐりと土が材料のパンや、ハエの幼虫を入れて作るチーズといった「救荒食」が含まれていたことがわかった。最も有名な魚介製品はカラスミで、内陸の羊飼いが新鮮な魚を食べることは滅多になかった。

現在、食生活は西欧化しつつあるが、とはいえ変化はそれほど大きなものではないため、彼らの食生活はある程度健康に保たれている、とビュイトナーは言う。