ゼレンスキー、プーチン、習近平と次々会談…!ハンガリー・オルバン首相「サプライズ行脚」の狙いは何か?

AI要約

EUの欧州理事会の理事長国は6ヵ月の輪番制で回ってくることになっていて、今月の後半はハンガリーの番だ。理事長国の首相や大統領は、その半年の間に指導力を発揮し、自分が重要と思う懸案を実現することも可能。

ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相がEUの欧州理事会の理事長を務めることになり、保守的で国民の支持が高い彼の行動にEUのエリートたちは驚いている。

オルバン首相は、EUの方針に対して異議を唱える立場であり、特にウクライナ支援や移民受け入れ、LGBT教育などで対立している。また、EU内でも孤立しており、独裁者として批判されている。

ゼレンスキー、プーチン、習近平と次々会談…!ハンガリー・オルバン首相「サプライズ行脚」の狙いは何か?

EUの欧州理事会の理事長国は6ヵ月の輪番制で回ってくることになっていて、今月の後半はハンガリーの番だ(欧州理事会とは加盟国の首長が集まるEUの政策決定の最高機関)。理事長国の首相や大統領は、その半年の間に指導力を発揮し、自分が重要と思う懸案を実現することも可能。つまり、今年の後半は、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相(フィデス党)の腕の見せどころとなる。

そのオルバン首相が、なんと、理事長を引き継いだ翌日の2日、キーウにゼレンスキー大統領を訪問した。さらにその5日には突然、モスクワでプーチン大統領と会見したため、EUは爆弾が炸裂したかのような大騒ぎ。EUのエリートたちの慌て方は尋常ではなかった。

ヴィクトル・オルバンとは誰か?

オルバン氏は1963年生まれで、ハンガリーの伝統を重視する保守の政治家だ。国民の支持は高く、しばしば5割を超える。1998年から2002年、さらに2010年から現在までは4期続けてハンガリー首相。極めて知的で、冷静で、しかもヒューマニズムに富んだ人物だ。

ただ、氏の保守的で愛国的な思想が、左傾化の激しいEU上層部としばしば対立し、EU首脳の爪弾きになってすでに久しい。しかも、今回、欧州理事会の理事長となったオルバン氏が、“Make Europa great again!”をスローガンとして掲げたため、EUの指導者たちはのけぞった。EUの政治家の間では、トランプ大統領は完全に悪魔化されており、氏のスローガンの焼き直しをEUの目標とするなど、けしからん話なのだ。

オルバン首相は以前よりトランプ氏を高く評価しており、弱体してしまったEUを復活させるには、まさにこの“Make Europa great again!”が必要だと考えている。思えばEU結成の元来の目的は、アメリカとアジアに対抗できるヨーロッパ圏を作ることで、脱炭素でも、難民の無制限受け入れでもなかったはずだ。ちなみにオルバン首相は、トランプ氏が大統領ならウクライナ戦争は絶対に起こらなかったとも断言している。

オルバン首相とEUの意見の相違は他にも多々ある。例えば、氏はウクライナへの武器や資金のこれ以上の供与には断固反対。また、中東からの不法移民の受け入れ拒否、ロシアのガスボイコット反対、LGBTを広めるような教育を小・中学校で行うことは禁止等々。そして、これらの論点のほとんどが、1対26、つまり、「ハンガリーvs.その他の全てのEU加盟国」という構図になっている。

実は、EUにはつい最近まで、ハンガリー、ポーランド、チェコの右派トリオが存在したが、ポーランドとチェコで政権交代が起こり、現在はオルバン首相が一人で踏ん張っている。それもあり、氏はEUの足並みを乱す良からぬ人物となっており、今やEUエリートに敬遠されているだけでなく、独裁者の汚名を着せられ、EUの規則を守らないとして罰金まで取られている。

ちなみに、私は個人的には、オルバン首相が現在のEUの首長の中で一番優れた指導者だと思っており、それについては、著書『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』の中でも少し触れた。氏の主張の見事な論理性、ぶれない思想、深淵な歴史の知識、そして、26人の首脳陣を敵に回してもびくともしない胆力は、ドイツや日本の政治家には、ちょっとやそっとでは真似のできない技である。