韓国の核武装論と朴正煕の10月維新【コラム】

AI要約

韓国が独自の核武装について真剣に検討する必要性が高まっている状況について考察。

過去の事例や今後の展望を踏まえ、韓国が核武装を検討する際には米国との協議が不可欠である。

韓国が核武装を進める場合、国際社会の反応や内政面での問題が懸念される。

韓国の核武装論と朴正煕の10月維新【コラム】

 「朝鮮半島非核化」を主張してきた革新系新聞の一員として、韓国の「独自の核武装」について言及することだけはできるだけ避けようと努力してきた。しかし、北朝鮮が攻勢的な「核ドクトリン」を持つ核保有国の地位を確保し、朝ロが先月、旧冷戦期に次ぐ同盟関係を回復した以上、この問題について真剣に考えざるを得ない状況に追い込まれることになった。さらに、ジョー・バイデン米大統領が先月27日に開かれた米国大統領選挙討論会で「惨敗」を喫し、在韓米軍撤退を主張してきたドナルド・トランプ前大統領が再び政権に就く可能性が非常に高くなった状態だ。トランプ前大統領が来年1月に権力の座に返り咲いた場合、在韓米軍の削減・撤退と韓国の核武装に関する議論が自然に韓米間の主な懸案に浮上するものとみられる。

 その場合、論議の出発点になるべき原則は、韓国が核拡散止条約(NPT)を一方的に脱退する「北朝鮮式の核武装」や、国際社会の監視から抜け出し、密かに核能力を高める「朴正煕式核武装」を試みることはできないという事実だ。結局、この問題は韓国の「唯一の同盟」であり「依然として覇権国」である米国との協議を経て決定せざるを得ない。おそらく核を持とうとする韓国の熱望、米国の冷徹な計算、朝中などの激しい抵抗など、さまざまな要因が相互作用する中で最終的に結論が出るだろう。

 このような点を踏まえ、参考にすべき前例は1970年代初めのリチャード・ニクソン政権下で行われた在韓米軍の撤退と韓国政府の対応だ(「米国大統領選挙後の国際秩序」をテーマに今月4~5日に開かれた国立外交院のオープン政策対話の議論が大いに参考になった)。当時のニクソン大統領が1969年7月、アジアの安全保障についてはアジア諸国が「第一義的責任を負うべき」という「グアム・ドクトリン」を発表した後、米国はベトナム戦争の早期終息と在韓米軍を含むアジア駐留米軍の削減を推進し始めた。トランプ前大統領も政権を握れば、「24時間以内に終わりにすることができる」と豪語してきたウクライナ戦争を急いで終わらせ、「2期目」に先送りしてきた在韓米軍の削減を試みる可能性がある。

 半世紀前に同じ状況に追い込まれた朴正煕元大統領は、1972年に7・4南北共同宣言を通じて南北関係改善を試みる一方、「自主国防」と「核開発」を同時に進めた。韓米間の激しい交渉の結果、米国は米第7師団(1万8千人)を撤退させる代わりに韓国に15億ドルの無償軍事援助を行った。また、韓国政府が積極的に進めた自主国防では大きな成果を上げたが、独自の核武装は米国の強い圧力に屈し、途中で放棄した。

 第2次トランプ政権が発足した場合、韓米交渉の主な争点は、在韓米軍の削減を容認する見返りに、米国からどれだけ多くの「核オプション」を引き出すかになるだろう。核武装を積極的に主張する韓国内の専門家たちは、直ちに「独自の核武装」までは得られなくても、日本と同じレベルの「核潜在力」(nuclear latency)は確保すべきだと主張している。米国は1988年の米日原子力協定を通じて、日本には「ウラン濃縮」と「使用済み核燃料の再処理」の権限を認めた。この能力があれば、韓国も日本のように国が決断を下せば、比較的短期間で核兵器を作ることができる。

 しかし、冷静に考えなければならない。米国が日本にこの能力を認めたのは、プルトニウムを平和的目的に活用するといういわゆる「核燃料サイクル計画」が前提になっていたためだ。この計画の「核心」である高速増殖炉建設計画はすでに技術的に破綻し、日本は青森県に建設中の再処理工場の完工を26回も延期している。このためか、日本は自らが持つ核潜在力が国際社会で議論になることを恐れ、「非核三原則」を大々的に掲げている。このような複雑かつ微妙な状況を無視し、韓国が「藪から棒に」軍事的目的であることが明らかな再処理の権限を求めると、米国は困惑せざるを得ない。韓国が騒げば騒ぐほど、得られる核オプションの幅は急激に狭くなる。

 最後に言及したいのは、来年以降、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が暴走する可能性だ。南北和解を主張した朴元大統領がわずか数カ月後に選んだ道は、結局「10月維新」(1972年10月17日、朴元大統領が「大統領特別宣言」を発表し、国会の解散や政党・政治集会の中止などを決定したうえ、韓国全土に非常戒厳令を発し、独裁色を強めた一連の宣布)だった。様々な面で窮地に追い込まれた尹大統領も、在韓米軍撤退の論議が本格的に始まれば、安保危機を掲げ、権威主義的統治を強化する可能性がある。独自の核武装論も、与党「国民の力」の政権維持のために乱用されるだろう。

キル・ユンヒョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )