ロシアと北朝鮮が新軍事条約:「同盟」に温度差も

AI要約

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記が包括的戦略パートナーシップ条約を締結し、軍事支援を含む同盟関係を強化した。

両国の関係は冷戦時代に遡り、新条約によって同盟関係が復活した。世界はこの動きを注目している。

プーチンと金正恩は国際的孤立から脱却し、互いの国の利益を追求するために軍事的接近を図っている。

ロシアと北朝鮮が新軍事条約:「同盟」に温度差も

高畑 昭男

ロシアのプーチン大統領が6月19日、24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と有事の相互軍事支援を含む「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。ロシア側は冷戦型の「同盟」と受け止められるのを避けようとしているものの、新条約は国連安保理決議違反であるばかりでなく、東アジアと欧州双方の安全を脅かす動きだ。

ロシアの前身であるソ連と北朝鮮は冷戦時代の1961年、有事には互いに自動的に参戦する条項を盛り込んだ「友好協力相互援助条約」を結んでいた。この軍事同盟条約は、冷戦が終結し、ソ連も崩壊した後の1996年に失効し、相互軍事支援を取り除いた「友好善隣協力条約」(2000年)に衣替えしてこれまでに至っていた。

北朝鮮が公表した新条約の全文によると、「(ロシア、北朝鮮の)いずれかが武力侵攻された場合、遅滞なくあらゆる手段で軍事的援助を提供する」(4条)と明記されている。金正恩氏も「両国関係を同盟という新たな高い水準に引き上げた」(6月19日、プーチン氏との首脳共同発表)と、手放しで歓迎して見せたことから、冷戦時代の同盟を事実上復活させたものと世界に受け止められた。

プーチン氏と金正恩氏は昨年9月、ロシア極東部の先端宇宙基地で会談し、軍事的接近と連携を着々と進めてきた。ウクライナ侵略で手詰まり状態にあるロシアに北朝鮮が武器・弾薬を送り、見返りとしてロシアが北に石油製品などの物資や軍事技術を提供する図式が明白となりつつあった。

その背景には、両国の国際的孤立の深まりがある。プーチン氏は昨年3月、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状を発付されたのに加え、今年6月のイタリア先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、ロシアの凍結資産の運用益から年内に500億ドル(約7兆8500億円)をウクライナ支援に投入する枠組みが合意された。

また、北朝鮮も計11本の国連安保理決議で制裁を科されている上に、最近も「軍事偵察衛星打ち上げ」と銘打った大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に失敗を重ね、威信を失いかねない状況だ。新条約は、共に窮地に陥ったプーチン、金正恩両氏の思惑の結果といえる。