「トランプが認める」という核武装論…朝ロ条約後に再登場も(2)

AI要約

韓国における核武装論の背景や現実的な困難、日本との違いについて述べられている。

政界で核武装論が浮上している理由や保守層の結集、外交の失敗から目をそらす動きが指摘されている。

専門家は、政府と政界が慎重に韓国の安保状況を見極め、核武装に関する真剣な協議が必要であると警告している。

「トランプが認める」という核武装論…朝ロ条約後に再登場も(2)

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「潜在的核能力」と韓日の違い

 このように現実的な困難が存在するため、ひとまず日本のように「潜在的核能力」を確保しようという主張も強い。国民の力のハン・ドンフン元非常対策委員長は25日、「核戦力を用いた安保の強化は絶対に必要だ」としながらも、NPTを脱退した場合の制裁などを考慮し、ひとまず「核武装の潜在的力量を持つところまでは行こう」と主張した。ソン・ミンスン元外交長官も潜在的な核能力の保有を主張している。

 日本は1988年に発効した日米原子力協定にもとづいて使用済み核燃料の再処理ができ、20%未満の低濃縮が可能だ。有事の際にはそれを用いて短期間で核兵器を保有する能力を備えているわけだ。韓国が日本のように「潜在的核能力」を確保しようとしても、2035年に有効期間が満了する「韓米原子力協定」を事前に改正しておかなければ、それは不可能だ。チョ・ソンニョル教授は、「2015年に韓米原子力協定を改正する際、朴槿恵(パク・クネ)政権は米国に再処理技術を認めるよう要求し続けた。後にはせめてパイロプロセッシングを認めてほしいと主張したが、米国はそれにも同意しなかった」と語った。パイロプロセッシングとは、原発で使用したウランなどの核燃料を回収し、次世代原子炉の核燃料として再利用する技術だが、米国はそれも結局のところ核兵器の製造につながる可能性が排除できないと判断し、韓国の要求に同意しなかった。

「保守層を結集させるための無責任な核武装論はむしろ安保を脅かす」

 では、このように独自の核武装はもちろん、潜在的な核能力の保有も容易ではないという現実にあって、またしても核保有論が噴出しているのはなぜなのだろうか。ロシアとの外交を放置していたため朝ロ条約が締結されてしまったという政府の外交の失敗から人々の目をそらすとともに、保守層を結集させるための、保守層の政治的メッセージだという分析が示されている。チョ・ソンニョル教授は、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がウクライナを訪問してから韓ロ関係は悪化し続けたにもかかわらず、外交安保の責任者たちは『韓ロ関係はレッドラインを越えないようにうまく管理されている』と言い続け、韓ロ関係を放置してきた」とし、「このたび朝ロが条約を結ぶと、慌てた保守勢力は議論の焦点を核武装へと移している」と指摘した。

 政界の核武装論は実体があるわけでもない。尹錫悦政権が米国と真剣に交渉し、韓米原子力協定の改正などを要求しているわけでもないからだ。昨年4月の尹錫悦大統領の米国国賓訪問でバイデン政権と「ワシントン宣言」を発表して以降、政府はその結果である核協議グループ(NCG)で核の傘の強化策を議論しているに過ぎない。尹錫悦政権に実際に韓米原子力協定改正の意思があるのなら、昨年の「キャンプデービッド宣言」の交渉過程でこれらの問題について要求すべきだったということだ。

 政界で保守層を結集させるために核武装の声を強めることは、むしろ韓国にとっては大きな不利益になるという懸念もある。

 チョン・ボングン教授は、「今、次世代小型モジュール原子炉(SMR)や核燃料用濃縮技術など、韓国が米国と協力しなければならない先端技術は多いが、韓国で核武装の声が高まるほど米国は韓国の意図に不信を抱くようになり、先端技術協力でも韓国を疎外する懸念が高まる」と語る。

 専門家は、政府と政界が真剣に韓国の安保状況を憂いたうえで、在韓米軍の撤退などで核武装を考慮せざるを得ない万が一のケースに備えるためには、より慎重でなければならないと強調する。日本が使用済み核燃料の再処理の権利を確保してからも、公には「核潜在力」に言及しておらず、非核三原則を一貫して強調することで国際社会の信頼を得ていることの意味を考えるべきだということだ。チョン・ボングン教授は、「韓国が本当に安保のために核潜在力を保有するためには、与野党が真剣に協議して明確な戦略を立て、『静かな外交』を展開していかなければならない」とし、「政界がこのように核保有を騒げば騒ぐほど、一歩も進めなくなるし不利になる」と懸念を示した。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )