「トランプが認める」という核武装論…朝ロ条約後に再登場も(1)

AI要約

北朝鮮とロシアが同盟の復元に準ずる条約を締結し、核武装論が再び浮上している。保守陣営を中心に議論が活発化しており、韓国の議員たちも核武装を主張している。

朝ロ条約に関する報告書が発表され、「核武装」への言及が拡大。しかし、韓国の核武装が現実的かどうかには疑問符がつく。NPT脱退や米国の反対など、多くの障害が存在する。

また、トランプ再選の可能性も核武装議論の背景にあり、トランプ政権関係者の発言が韓国の核武装論を後押ししている。しかし、実際に核武装を容認する可能性は低いとされている。

「トランプが認める」という核武装論…朝ロ条約後に再登場も(1)

 19日に北朝鮮とロシアが同盟の復元に準ずる条約を締結したことを受け、保守陣営を中心として核武装論が改めて噴出している。

 朝鮮戦争から74年を迎えた25日、国民の力の代表候補たちが韓国の核武装論をめぐって論争を繰り広げた。この日、保守系団体「新たな未来準備委員会」のセミナーに参加したナ・ギョンウォン議員は、「今や韓国も核武装すべきだ」と述べた。ソウル市のオ・セフン市長は同セミナーで、「今日、5回目の汚物風船を見て、我々も核を開発すべきだと考えざるを得ない」と述べた。ナ議員は26日にもフェイスブックで、自身が党代表となれば「核武装」を党の方針として採択すると表明している。

 もう一つの「導火線」は、21日に国家情報院傘下の国家安保戦略研究院が発表した報告書だ。「ロ朝首脳会談の結果の評価および朝鮮半島に波及する影響」と題するこの報告書は、朝ロ条約の意味を分析しつつ、最後の部分で「(韓国の)独自の核武装、または潜在的な核能力の具備など、様々な代案についての政府レベルでの検討および戦略的公論化を推進すべきだ」としている。朝鮮日報をはじめとする保守メディアはこの一節を取り上げつつ、「核武装論」に改めて火をつけた。朝鮮日報は25日の社説で同報告書を引用した後、「これまでに国策研究所は、北朝鮮の核の脅威に対抗して米国の戦術核の再配備やNATO式の核共有に言及したことはあるが、独自の核武装と再処理権限の確保にまで言及したことはほぼなかった」とし、「もはや韓国政府も核武装論議をタブー視してはならない」と述べた。

核武装に現実性はあるのか

 北朝鮮の核能力の強化や朝ロ密着などで、韓国の安保環境が大きく悪化しているのは明らかな現実だ。問題は、韓国の核武装が現実的に可能なのかだ。核開発は核拡散防止条約(NPT)の脱退によって始まる。NPT第10条1項は、異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、3カ月前に国連安全保障理事会(安保理)などに通知のうえ、脱退できるとしている。韓国がNPT第10条1項を根拠に脱退を宣言したとしたら、安保理の韓国制裁決議案に米国は拒否権を行使してくれるだろうか。米国は、韓国の核武装を容認した際に日本、台湾、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコなどでもNPT脱退と「核ドミノ」が起きることを懸念するだろう。韓国が制裁を免れるのも困難だ。

 慶南大学軍事学科のチョ・ソンニョル招へい教授(元大阪総領事)は、「韓国が核武装するためにNPTを脱退すると、国連安保理の経済制裁を受けることになる。貿易に依存する韓国が持ちこたえるのは困難だ。しかも、韓国は電力生産の29%を原子力発電に依存しており、原子力供給国グループ(NSG)からの核燃料(MOX)の供給が断たれるため、大きな困難に直面することになる」と語る。

 そのうえ、米国の同意と黙認なき核開発は韓米同盟の破綻を招くということは、専門家が共通して指摘するところだ。昨年4月、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とバイデン大統領はワシントンでの首脳会談で、米国が朝鮮半島の拡大抑止を強化する代わりに韓国は独自の核武装を行わないとする「ワシントン宣言」を発表した。米国はこれによって、韓国が核武装に言及するのを遮断した。朝ロ条約後、韓国の核武装論が改めて噴出すると、キャンベル国務副長官は24日(現地時間)の米国外交問題評議会(CFR)の行事で、朝鮮半島において核抑止力を強化するために「ワシントン宣言」以外の措置が必要だと思うかと問われ、「(ワシントン宣言が)我々が今対応するのに必要なものを提供したと思う」と答えた。韓国の核武装論に反対するバイデン政権の明確な立場を改めて強調したのだ。

トランプが再選されれば韓国の核武装を認めるか

 核武装論のもう一つの背景は、11月の米大統領選挙におけるドナルド・トランプ再選の可能性だ。トランプが再選されれば在韓米軍削減、韓米合同訓練の縮小などが予想されるため、韓国も核開発が必要だというわけだ。トランプ2期目が現実のものとなった際の国家安保担当大統領補佐官の候補と言われているエルブリッジ・コルビー元国防副次官補をはじめとするトランプ陣営の関係者の、相次ぐ「韓国の核武装容認」示唆発言が、韓国核武装論の重要な背景となっている。トランプ政権時代に朝鮮半島政策の実務担当者だったアリソン・フッカー元ホワイトハウス国家安保会議(NSC)アジア担当上級補佐官は今月21日、「我々は韓国が独自の核武装に向かって進み続けており、もしかしたらより急速に進むということを排除できない」と語った。代表的な保守系シンクタンクであるケイトー研究所のダグ・バンドー上級研究員も、21日の外交専門誌「フォーリン・ポリシー(FP)」への寄稿で、「米国の政策立案者たちは、韓国と日本が独自に核兵器を開発することもありうると心配している」とし、「良くないことではあるが、米国人を北朝鮮の(核)能力の人質にしておくことの方がはるかに悪いこと」だと述べた。

 しかし、実際に第2期トランプ政権となった時、彼らが実際に韓国の核武装を容認するとは考えにくいという意見は強い。国立外交院のチョン・ボングン名誉教授(韓国核政策学会会長)は、「今、トランプ陣営の中で競争しているこれらの人物は、韓国人の関心に合わせてリップサービスしているが、実際に政府に入って働くことになった時、韓国の核武装を容認する可能性はほとんどない」とし、「米国の外交安保の主流においては核不拡散原則が依然として非常に強力だという現実を直視しなければならない」と述べた。ダグ・バンドーをはじめとする韓国の核武装の可能性を示唆する人々は在韓米軍の撤退を一貫して主張してきた、ということも特に留意する必要がある。(2に続く)

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )